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2022.12.05 08:00

【同性婚訴訟】法的保護へ議論を急げ

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 同性婚を認めていない民法や戸籍法の諸規定が憲法に違反するとして同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は同性愛者がパートナーと家族になるための法制度がない現状を、「憲法違反の状態だ」と指摘した。
 同種の5訴訟で3件目の判決。いずれの判決も、同性婚の立法措置をしないことが将来的に違憲となる可能性を示唆している。繰り返される司法の要請に、いつまでも現状を放置することは許されまい。法整備へ議論を急がなければならない。
 東京地裁は判決で、同性カップルと異性カップルが受けられる法的利益の差異に言及。憲法14条が定める「法の下の平等」に関する検討では「婚姻を異性間のものとする社会通念」には合理的な根拠があるとし、現行の婚姻制度そのものは「違憲とまでは言えない」と結論付けて賠償請求は退けた。
 ただし、同性カップルが生涯を通じて法的な家族になれない現状は、「人格的生存に対する重大な脅威、障害」であると強調。法律婚ができないために、税制や相続といった法的保護の枠外になっていることへの警鐘を鳴らした。
 同種の裁判では、昨年3月の札幌地裁が同性カップルと異性カップルが受けられる法的利益の差異に着目し、「法の下の平等」の観点から「違憲」と判断している。今年6月の大阪地裁と今回の東京地裁は「合憲」と結論は分かれたが、いずれも同性カップルの法的保護の必要性を認め、現行制度に疑問符を付けた点は共通する。
 こうした司法の要請にもかかわらず、国会の動きは極めて鈍い。自民党は2016年、性的少数者の権利拡充などを検討する特命委員会を設置。性的少数者に関する「理解増進法案」を国会に提出しようとしたが、昨年5月に事実上、見送られた。伝統的な家族観を有する保守派議員が強く反発したためだ。
 国会の議論が停滞する一方で、社会の理解は着実に進んでいる。性的マイノリティーに関する意識調査では、同性婚に理解を示す人が15年の51・2%から19年には64・8%に増えた。国民と国会の意識の乖離(かいり)は、一層広がっているといわざるを得まい。
 同性カップルを婚姻に相当する関係と認めるパートナーシップ制度を導入した自治体も、高知市など200を超えた。
 東京地裁は判決で同性婚のほか、諸外国で導入されているパートナーシップ制度などを例示して、法的保護には多様な選択肢が想定されるとした。婚姻制度と別の制度となれば伝統的価値観との折り合いはつけやすい半面、偏見や差別を固定化させるとの見方もある。議論を深めつつ、具体的な対応を急ぎたい。
 同性婚や同性カップルの法的保護を認めていないのは先進7カ国(G7)で日本だけだ。対応が遅れるほど、不利益を被り続ける人がいることを認識する必要がある。日本の国会、政府の人権意識が問われる。

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