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2022.11.24 08:40

いつか高知であそぼうね ウクライナの子ども励ます「絵手紙プロジェクト」児童ら平和願い贈る

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高知の子どもらから贈られた絵手紙を手にするウクライナの子どもたち(キーウの市立幼稚園・小学校「シャイヴォ」=ヴィクトリア・カミンスカさん提供)

高知の子どもらから贈られた絵手紙を手にするウクライナの子どもたち(キーウの市立幼稚園・小学校「シャイヴォ」=ヴィクトリア・カミンスカさん提供)

 希望の絵手紙、ウクライナに届いた―。県内の有志グループが集めた高知の小中学生らによる絵手紙がこのほど、同国の教育関係者を通じて首都キーウの子どもたちに贈られた。

 ヒマワリやウクライナ国旗などを描いた150枚の絵の裏側につづられたのは、平和を願い、戦時下で学ぶ子どもらを励ます自筆のメッセージ。

 「生きのびてください。いっこくも早く戦争が終わりますように」

 「戦争がなくなったら、いっしょにあそびたい」

 ウクライナ語の翻訳を添え、来日していた同国の女性校長に絵手紙を託すと、11月15日、現地から高知のメンバーに子どもたちの写真と感謝の言葉が届いた。

 「親愛なる日本の友だちのみなさん、応援してくれてありがとうございます。もうすぐ戦争が終わって、私たちはあなたたちにきっと会えます」

はたけのヒマワリ見せたいな
県内の子どもらから贈られた絵手紙と日本をテーマに描いた絵を掲げるウクライナの子どもたち。後列中央が写真を提供したヴィクトリア・カミンスカさん(キーウの市立幼稚園・小学校「シャイヴォ」)

県内の子どもらから贈られた絵手紙と日本をテーマに描いた絵を掲げるウクライナの子どもたち。後列中央が写真を提供したヴィクトリア・カミンスカさん(キーウの市立幼稚園・小学校「シャイヴォ」)

 ロシアの侵攻で戦禍にさらされるウクライナの子どもたちを励まそうと、県内の有志グループが手弁当で企画した「絵手紙プロジェクト」が実現した。つてをたぐってつながった同国の教育関係者が橋渡しした真心のバトン。メンバーの下には絵手紙を手に喜ぶ現地の子どもたちの画像が届き、草の根交流の継続に向け思いを新たにしている。

 グループは、高知市内で英会話教室を営む角田詩子さんが代表を務める「Future discovery」。平和や国際貢献に関する講演会を開く活動をする中、ニュースで流れる同国の惨状に心を痛め、「何かできることはないか」と考え始めた。

 5月、角田さんがテレビで日本に避難してきたウクライナ人を紹介する報道番組を見たとき「この人だ」とひらめいた。

 昨年結婚した埼玉県の日本人男性の下に身を寄せていたヴィクトリア・カミンスカさん。首都キーウにある外国語学習専門の市立幼稚園・小学校「シャイヴォ」の校長で、空爆を避けてポーランド経由で来日していた。

 角田さんはテレビ局に頼み込んでコンタクトを取り、カミンスカさんと連絡を取ることに成功。学校再開に向けていったん帰国したカミンスカさんとオンラインでやりとりし、「子どもたちを元気付けたい」と思いを伝えた。

 絵手紙を通じた交流を提案すると、カミンスカさんは「それはうれしい。突然、両親を失った子もいる。今一番必要なのは心の支え」と賛同。10月に再来日する際に、直接手渡しすることになった。

 ◇ 

 絵手紙づくりは6月からスタート。英会話教室の生徒のほか、呼び掛けに応じた高知市の三里小と三里中、高岡郡佐川町の斗賀野小の児童・生徒が参加した。3校ではウクライナの現状などを学ぶ平和学習も行った。

 知人を通じて京都や名古屋の子どもたちも加わり、集まったB5サイズの絵手紙は150枚。和紙製のしおりも150枚つくり、ラミネート加工した。

平和を願い、ヒマワリや虹など高知の子どもらが絵手紙を描いた(高知市八反町2丁目)

平和を願い、ヒマワリや虹など高知の子どもらが絵手紙を描いた(高知市八反町2丁目)

 描かれたのは、日本とウクライナの国旗や虹、ヒマワリや子どもたちが手を取り合う様子など。色とりどりの絵の裏には同国の子どもたちに宛てたメッセージが書き込まれた。

 「ウクライナでせんそうをしているのを知りました。早く平和になってほしいです。ぼくのお母さんとお父さんは花をつくっています。今、はたけでヒマワリの花を育てています。あなたに見せたいな」

 「ウクライナのお友だちへ。いつか高知にきていっしょにあそぼうね。ぼくのこといっぱい知ってね。あなたのことも知りたいよ。ウクライナが平和な国になることをねがってるよ。大すきだよ」

 メッセージは、同国出身の高知工科大学助教、コスチャンチン・オヴシアンニコウさんの協力を得て、一つ一つウクライナ語に翻訳。10月、角田さんらが埼玉県でカミンスカさんと面談し、絵手紙を託した。

 ◇ 

 「私たちは式典を行いました。万歳! 子どもたちは大喜び!」

 カミンスカさんから届いたメッセージによると、贈呈セレモニーは11月15日に学校で行われた。この日はキーウで激しい空襲があり、学校上空を2発のロケット弾が飛んだ。

高知の子どもらのメッセージにはウクライナ語訳が添えられた

高知の子どもらのメッセージにはウクライナ語訳が添えられた

 地下シェルターに5時間避難するなどの困難がありながらも、子どもたちは日本の歴史や平和について学習し、「感謝のしるし」として日本の子どもに向けた絵を描いたという。

 カミンスカさんは「日本の子どもたちが心の底からウクライナを応援してくれている、良い言葉がたくさんあふれている」と感謝。相互支援の大切さと交流継続を訴えている。

 「高知の子どももウクライナの子どもも大切な財産。自他の幸せを願い、人を励ます子どもたちの純粋な力を感じた」と角田さん。県内の学校でプロジェクトを紹介する活動を通じ、今後も両国の交流の輪を広げていきたいという。(大野泰士)

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