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2022.08.29 08:00

【県内国保料統一】医療費どう抑えていくか

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 県内の国民健康保険(国保)事業で、現在は市町村ごとに異なる保険料が2030年度に統一される。県と34市町村が合意した。県内の公的医療保険の大きな節目だ。統一に合わせ、地域医療や保健行政の在り方を再構築していく必要もある。
 県内国保には年金生活者や自営業者ら約16万5千人が加入する。人口減少に伴い、小規模自治体ほど国保財政の不安定さが増している。安定運営のため、広域化して規模を大きくするのは必然の流れだろう。
 ただ、市町村ごとに取り巻く医療環境は異なる。保険料を統一すれば、負担と受益のバランスで地域によっては不満が出かねない。地域間の不公平感を生む要素は極力、取り除いていかなければならない。
 国保の運営自体は18年度、市町村から県に移管された。保険料に関しては、引き上げられることになる自治体の反発などが見込まれ、統一は見送られていた。
 今回それに踏み切るのは、状況がより抜き差しならなくなったからにほかならない。大川村は加入者が90人ほど、馬路村は200人ほどとなっている。高額医療を必要とする患者が出ただけで保険料が乱高下するリスクに直面している。
 そもそも、住む場所が違うからといって医療サービスを受けた場合の国保の適用条件に差はなく、同一保険料は、被保険者間の公平性にもつながるとされる。今回の動きはその流れにも沿う。
 県内の市町村長もおおむね、統一の必要性に賛同する。だが不公平感を口にする首長もいる。地域の医療資源や医療水準には差があり、同じ保険料でも受けられるサービスに開きがあるからだ。保険料をそろえていくのであれば、各地であまねく、地域医療体制を確保していく取り組みが求められよう。
 また、医療費や保険料を抑えるため、健診の受診勧奨や健康づくり事業などを積極展開している市町村にとっては、取り組み意欲が後退することは避けられまい。
 保健事業の主たる担い手は市町村である。だが国保財政が広域化されるのなら、医療費抑制の取り組みは全県一律的に進められなければならず、県のリーダーシップがより重要になる。先進的に取り組んできた市町村の取り組みを他に広げていく好機にもなろう。
 懸念は、30年度の統一保険料が、土佐市を除いて上昇する見通しであることだ。1人当たり保険料が増加傾向であることに加え、一部自治体が行ってきた一般会計からの繰り入れなどがなくなる。県平均では年間1万1200円余りの増加が見込まれる。
 国保料の増減に対する住民の関心は高く、矢面に立つ市町村の現場にかかる負担は大きい。県全体で、住民が理解を得られやすい環境づくりを進めていく必要がある。
 それにはやはり、保険料の負担感をどこまで軽くできるかにかかる。医療費の肥大化を防ぐ取り組みで実効性を上げていくことが重要だ。

高知のニュース 社説

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