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2022.08.28 08:00

【安倍氏警護検証】教訓を見直しに生かせ

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 警護の不備が重大な結果をもたらしたと自ら認める内容だ。責任は警察組織のトップにも及んだことを真剣に受け止め、反省と教訓を態勢見直しに生かすことが求められる。
 安倍晋三元首相銃撃事件で、警察庁が公表した警護の検証・見直し結果は、後方に警護担当者が適切に配置されていれば事件を阻止できた可能性が高いと指摘した。
 要人警護は治安維持の根幹に関わる。街頭演説中の安倍氏が銃撃され、死亡した事件の衝撃は大きい。警察による警護が行われていたにもかかわらず犯行を防ぐことができなかったことは、警護の在り方に厳しい視線を投げかけた。
 検証では、容疑者の接近に気付かなかったことが事件を阻止できなかった主因と位置付ける。多数の車両や歩行者が通過する会場後方の危険性が見落とされていた。また、演説直前に配置と警戒方向を変更しながら後方の補強をしなかったことを、警戒に「空白」が生まれた問題として挙げた。
 これを受けて、基本的事項を定めた「警護要則」を抜本的に見直し、警察庁による都道府県警への関与を強める。警察庁は、都道府県警の責任で警護を実施する仕組みに限界が生じているとの認識を示す。判明した問題点の見直しは急務だ。
 都道府県警は基準に基づき警備計画を作成し、警察庁から修正や注意点の指示を受けることになる。実施後は状況を確認し、今後の警備で注意することを警察庁に報告する。ほかにも警視庁SP(警護官)の増員などを打ち出している。
 情報の共有を図りながら警備の精度を上げ、事後の対策に生かすことは重要だ。ただ、関与を強めることで計画ばかりが先行しては意味がない。十分に機能して実効性が伴うよう、関与の仕方や人員面などきめ細やかな制度設計が欠かせない。
 銃器対策も怠れない課題だ。容疑者はインターネットの情報から銃と火薬を自作したとされる。技術革新は一面では社会の脅威を増やし、治安対応の難しさを高めている。情勢変化に応じた警護の在り方を模索していくしかない。
 事件を受け、警察庁長官が辞任、奈良県警本部長が辞職する。警護の直接的な責任は県警にあり、長官は指揮監督の立場とされる。衝撃の大きさから長官も辞任必至の見方はあったが、それほどの重大性を持つ事件だ。それを肝に銘じて見直しを進めていくことだ。
 悲劇を繰り返さないよう警護の強化が迫られる。一方で警護が政治家と有権者との距離を遠ざけるようでは、街頭演説などの目的も薄れてしまう。安全性とのバランスは簡単ではないが、強化の側面ばかりが前に出ては市民の支持や協力を失いかねない。丁寧な対応が必要となる。
 安倍氏の国葬をはじめ、先進7カ国首脳会議(G7サミット)など海外からの要人警護も続き、警備態勢への関心が高まる。日本の治安に疑念をもたれないよう万全の対応をとりたい。

高知のニュース 社説

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