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2022.08.22 08:00

【県最賃33円上げ】中小企業の経営支援を

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 高知県の2022年度の最低賃金(最賃)が、現在の時給820円から33円(4・02%)引き上げられ、853円となる見通しとなった。高知地方最低賃金審議会が高知労働局長に答申した。10月上旬にも適用される。
 引き上げ額・率とも、現行制度になった02年度以降で最大となる。中央審議会が示した本県の引き上げ目安より3円多く、この上乗せ幅も12年度と並んで最大となった。
 物価高騰が家計を直撃する中、労働者側の主張が手厚く反映された形だ。経営者側は、額を決める採決で反対したが、大幅上げが妥当な局面なのは間違いない。厳しさはあるだろうが、社会、時代の要請として考えを切り替えてほしい。
 22年度は、中央審が示した全国平均の引き上げ目安額も最大だった。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う物価高は国内でも顕著で、消費者物価指数は4カ月連続で2%を超える。本県を含めた下位グループは30円上げの目安が示されていた。
 地方審の協議は、大幅上げを求める労働者側と、けん制する経営者側の溝が埋まらないまま進み、両者の主張を踏まえた公益委員が「33円」を提案した。物価高への対処、企業の業況の改善傾向、他県とのバランスを根拠とした。
 中でも大きなウエートを占めたのは他県とのバランスだろう。協議中、下位グループの多くが「853円」で決着したことが伝わってきた。
 全国で単独最下位になればイメージが悪化し、若者流出などの弊害も招きかねない。21年度最賃額が最低だった本県と沖縄は、繰り返しアナウンスされた。額の「横並び」の力学が強く働くと、地域経済の実態と開きが出る恐れもあるが、現行制度を前提にすればやむを得まい。
 一方、大幅賃上げで、事業者の極端な経営悪化や雇用縮小を招いてはいけない。その観点から答申には、中小企業の賃上げ支援を政府に求める付帯決議も盛り込まれた。
 事業者側も原材料の高騰や新型コロナウイルス禍の影響を受けている。とりわけ本県は、中小企業の割合が高い。政府は、コスト上昇分の価格転嫁ができる環境づくりや、賃上げを誘導する経営支援を強化していく必要がある。
 最賃の地域間格差は、トップだった東京都が中央の目安通り31円としたため、2円縮んだ。このことは評価できる。だが、差は219円となお大きい。格差を前提とした最賃決定の仕組みは適切なのか。全国一律化を求める声もある中、在り方を探っていかなければならない。
 賃上げに当たり、事業者には支払い能力とは別の懸念もある。税の控除適用年収の範囲内で働きたいパート労働者らは、時給が上がれば就業時間を減らす。それが人手不足に苦しむ事業者にとって、看過できない問題になっているという。
 地方審はこの懸念を踏まえ、扶養控除を含めた税・社会保障制度の見直しを検討するよう、今回初めて要望に盛り込んだ。政府はしっかりと向き合う必要がある。

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