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2022.08.22 05:00

「植物写生の達人・関根雲停に感嘆」シン・マキノ伝【5】 田中純子(牧野記念庭園学芸員)

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 高知市滞在は短かったが、牧野に影響を少なからず与えた出来事が他にもあったと推測される。それは、「大日本植物志」(第1集第4巻、1911年)に収載されるホテイランの解説文に登場する関根雲停(1804~77年)に関することである。牧野はその解説で雲停を「植物写生の達人にして前を空くして其(その)技同人に及ぶものあるを見ず、其軽妙にして神に入るの筆、覧(み)る者をして真に感歎措(お)く能(あた)はらざらしむ、彼の英国の有名なるW.H.Fitch氏に匹敵し、実に植物写生界東西の双璧と称すべし」(カタカナをひらがなに改めた)と評して絶賛している。

関根雲停筆「タツタユリ」(弘化4年6月写、個人蔵)

関根雲停筆「タツタユリ」(弘化4年6月写、個人蔵)

 雲停は、江戸時代の後半に動物や植物を写生した絵師として活躍した人物で、富山藩主・前田利保(1800~59年)に重んじられたことが知られている。その絵は、花鳥画のように多種の動植物を組み合わせて配置したものではなく、図鑑のように対象物を1点ずつ描画したものであった。ゆらめき、ぐんぐん伸びていく、そのような動きのある植物の様をリアルに写生した絵がユニークで、定評がある。雲停の絵を見ていると、まさにそこに植物が生息しているような錯覚にとらわれると言っても言い過ぎではなかろう。

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