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2022.06.06 21:00

【動画】「クラシックが格好いいと思った瞬間」 ピアニスト・反田恭平さんインタビュー

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反田恭平さん(県民文化ホール=森本敦士撮影)

反田恭平さん(県民文化ホール=森本敦士撮影)

 
 2021年10月にクラシック音楽の世界三大コンクールの一つ、「ショパン国際ピアノ・コンクール」で2位に輝いた反田恭平さん(27)が4日、高知市で開かれた新日本フィルハーモニー交響楽団50周年記念演奏会の高知公演でソリストとして共演しました。ベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、そしてソリストアンコールではショパンのポロネーズ第6番「英雄」を熱演した後、これまでの歩みやピアノを学ぶ人たちへのアドバイスを語ってくれました。(聞き手=上野芙由子)

■人生で一番苦しい緊張を味わった

 ー高知での演奏は19年3月以来です。今回の演奏会はいかがでしたか。

 「率直に楽しかった。新しいベートーベン像が浮き彫りになったコンサートだったなと思います。この感覚を絶対に忘れないように、弾き続けたいなと思っています」

 ーあらためてショパン国際ピアノ・コンクールはどんな経験でしたか。

 「ショパン・コンクールを志してから6年。一人の作曲家に真剣に向き合って、普段あんまり読まない書物をあさり、破れるくらい楽譜を見て、いろんな人の音源を聴きました」

 「振り返ってみると、あの期間がなければ、有名なピアニストたちの前で弾くという度胸はつかなかったと思います。不思議なことにコンクールが終わってから、全く緊張しないんです。人生で一番苦しい緊張を味わったので。ただただ自分が2回りも3回りも大きく成長して、ステージで何があっても動じなくなってきました」

 「今、指揮の勉強もしていますが、指揮台に立つ方が緊張します。ですから、コンクールを受けてよかったと思います。そういう可能性がある子には、『将来コンクールは受けるべきだよ』と伝えたいです」

■スタジアムで打席に立つ、みたいな感覚

 ー4歳から音楽教室に通い始めましたが、当初は特別な教育は受けていなかったそうですね。

 「僕はサッカー選手になりたかった。サッカーのワールドカップだと、一蹴りで世界がスタンディングオベーションして、何十億人が盛り上がる。でも、クラシック音楽だったらそうじゃなくね? そんな思いが子どもの頃にはありました。だけど、人の心に残る音や空間がクラシックにもあることを12歳の時に知って、そこからちゃんとピアノを弾くようになりました」

 ー12歳の時に転機が訪れたのですね。

 「オーケストラや指揮者の在り方を知るワークショップを受けたんです。最終日に(指揮棒を)振る機会が回ってきました。大きなホールで東京のプロのオーケストラの前です。指揮台に立って、腕を振り下ろす。その時、僕は音圧に感動しました」

 「クラシックのコンサートに行ったことはありました。でも、全然違った。分かりやすく言えば、スタジアムで打席に立つ、みたいな感覚。それぐらい僕にとって大きなインパクトでした。僕は初めてサッカーより格好いいものを覚えました」

 「指揮者の先生に『どうしたら指揮者になれますか』と聞きました。先生は『まず楽器を一つ、ちゃんと勉強しなさい。まずは極めてみなさい』と言いました。僕にとってその言葉は重く、深く残っていて、今日まできました」

■上達への近道は「自分を見つめ直す」

 ―ピアノを習う子どもたちから「練習が嫌だ」という声を聞きます。

 「練習の好き嫌いに大いに関係してくるのは、恐らくピアノの先生だと思います。先生が生徒に『これだけ弾ければ楽しい世界が待っているんだよ』と、ちゃんと伝えられていないから子どもは練習が嫌になる。それに尽きると思います」

 「僕は恵まれていて、先生はみんな優しかった。反抗期の時は、いろんな先生に反抗していました。そんな僕に辛抱強く手取り足取り教えてくださった先生がいる。ありがたい」

 ーピアノが上手になる方法は何でしょう。

 「一番分かりやすく、上達しやすいのは、自分の演奏を録音すること。僕はよく、ボイスレコーダーで録音し、聴いていました。自分が想像していたのと違うな、とか、何かつまんないな、とか。自分を見つめ直すのが一番の近道だと思います」

 「あとは、いろんな人の演奏をよく聴くこと。いろいろな音源を聴いて、テクニックを知る。僕が最も大事にしている言葉は『優秀な人は模倣し、偉大な人は盗む』というピカソの言葉です。ピアノに関しても全く一緒だと思います」

■何かに没頭できる環境を見つけて

 ー今後の展望を教えてください。

 「すごくビッグなオーケストラとどんどん共演して、世界各国から呼ばれるようなアーティストになりたい。まずは僕がいろんな会場で弾いて、ちゃんと足跡を残したい。次に呼ばれた時は、立ち上げた管弦楽団『ジャパン・ナショナル・オーケストラ』のみんなと一緒に行きたいです」

 ー高知の子どもたちへ伝えたいことは。

 「僕が音楽家として生きている中で、最も大事にしていることの一つは全力で遊んで、全力で音楽に向き合うことです。友だちと一緒に話したり、けんかしたり、笑ったり。どんな職業に就こうが、そんな思い出が何かしらの糧になると思う」

 「いろいろなことに取り組むことで、自分の価値観が広がってくる。皆さんも何かに没頭できる環境を見つけてほしいと思います」

 そりた・きょうへい 1994年東京都出身。モスクワ音楽院を経てショパン国立音楽大に在籍。2016年にリサイタルデビュー。18年に音楽事務所を設立。21年には自身が立ち上げた管弦楽団「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」のための株式会社を設立した。

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