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2022.05.31 08:00

【線状降水帯予報】早期の「備え」に生かそう

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 雨の多いシーズンが近づいてきた。地球温暖化による気候変動を背景に、近年は想定外の豪雨被害が続発している。ハード面だけでなく、ソフト面の備えがますます重要になっている。
 気象庁はあすから、豪雨の原因となる「線状降水帯」の発生について予報を始める。予測の精度には改善の余地があるようだが、避難行動の前倒しなど早期の準備ができるようになる。有効に活用し、命を守る行動につなげたい。
 線状降水帯は、次々と発生する発達した積乱雲が列になり、長時間、同じ場所に激しい雨を降らせる。鬼怒川の堤防が決壊した2015年の関東・東北豪雨、本県でも大きな被害が出た18年の西日本豪雨、球磨川が氾濫した20年の熊本豪雨などは線状降水帯がもたらした。その被害の大きさゆえに、国が発生予測手法の研究を進めていた。
 発生予測は、海上の水蒸気量や陸上の湿度が複雑に関係するため難しいとされたが、気象庁は、官民の船舶に水蒸気観測機器を搭載し、水蒸気量を正確に捉える「マイクロ波放射計」という装置も西日本各地に設置。収集データの分析にはスーパーコンピューター「富岳」を使うなどし、実用化にこぎ着けた。
 気象庁は昨年6月から、線状降水帯を確認した際には「顕著な大雨に関する気象情報」を発表する取り組みを始めている。だがあくまで、雨が降り始めた後の「速報」であり、自治体が情報を得てできることも限界があった。その意味でも予報開始は、一歩前進だと言えるだろう。
 予報は、発生の半日~6時間前、「九州北部」「四国」などといったブロック単位で発表する。時間帯も「夜」「日中」と幅を持たせた形で警戒を呼び掛ける。発生メカニズムに不明な点が多い中、予想の精度は高いとは言えず、的中確率も4回に1回程度だという。
 ただ、「空振り」だったとしても油断はできない。発生が予想される条件では、線状降水帯にならなくても大雨になることが多いという。
 もとより荒天時のリスク判断は、線状降水帯の発生予報のみでなく、随時更新される気象情報や、土地土地の条件を踏まえて総合的に行われるものだ。そのようなことを念頭に、自治体は線状降水帯予報に接していくべきだろう。気象庁は、発生を見逃す確率も3回に2回あるとしている。予報が出ていないからといって警戒を怠ってもいけない。
 予報を自治体が避難指示などの判断に生かせたとしても、住民が呼応しなければ意味は半減する。西日本豪雨の県内の例では、最大で12万人に避難指示・勧告が出されたが、実際に避難所に避難した人は約700人にとどまった。住民意識を啓発していくことも併せて必要だ。
 気象庁は、スタート時はブロック単位の予報範囲を、24年には都道府県単位に、さらに29年には市町村単位に絞り込むとしている。情報の具体性が高まれば、関心も信頼性も高まる。着実な改善を求めたい。

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