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2022.05.28 08:00

【吉川元農相有罪】公正な行政へ厳しい言葉

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 「政治とカネ」問題の根深さを改めて見せつける判決だ。政策がゆがめられていないか、さらなる検証と再発防止へ向けた取り組みの強化が求められる。
 鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表から現金計500万円を受け取ったとして収賄罪に問われた元農相の吉川貴盛被告に、東京地裁は有罪判決を言い渡した。
 判決は、2018年11月~19年8月、大臣室などで元代表から受け取った計500万円を、いずれも賄賂と認定した。家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア」の国際基準案に農林水産省として反対意見をとりまとめるなど、業界に便宜を図ってもらいたいとの趣旨と知っていたと判断した。
 元農相は受け取った金銭の領収書を作成せず、政治資金収支報告書にも記載していない。このため、秘密裏に扱うべき性質の金銭と理解していたと位置付けた。
 こうした行為について判決は、農相としての職務や農林水産行政全体の公正さに悪影響を及ぼすと言及し、「非常に悪質」と断じた。また、現金は全額が使われていることなどを取り上げ、農相として高度の倫理性、廉潔性の自覚が欠けていたと、厳しい言葉を重ねている。
 弁護側は、現金は「政治活動の応援」との趣旨で、賄賂の認識はなかったと無罪を主張していた。これに対して判決は、政治献金との認識は「不合理」と否定した。
 その上で、一般的な常識からはかけ離れた弁解に終始し、政治家として反省していないと非難した。一般的な常識に沿う文言が並んでいるように思える。
 一方、執行猶予を付けた理由には、現金を求めるような行為はなく、政策判断がゆがめられたとは認められないことなどを挙げた。
 農水省の第三者委員会は、政策が不当に変更されたケースは確認されなかったと報告している。元農相から職員への働き掛けがあったことは確認した。しかし、公判への影響を考慮したようで、元農相ら事件当事者を調査から外したため、施策の公正性が保たれたと言うには説得力に欠けている。
 政策決定の過程が不透明なままでは信頼は高まらない。疑念が残らないように対応する必要がある。公判では、農相の在任期間外でも計1300万円を元代表から受領したことが公判で明らかになった。いずれも政治資金規正法に基づいた処理がされていなかった。
 この事件が発覚したことに伴い、官僚の忖度(そんたく)がうかがわれる事例や倫理規程に違反する会食などが明らかになった。こうした不祥事の度に改善策が打ち出されてはいるが、政官業の距離や力関係がいびつな構造に陥らないように緊張感を維持することが何より必要だ。
 行政には公正で透明性が求められるのは当然だ。ゆがめられることがあってはならず、そもそも、そうした疑念を持たれること自体が政治不信につながる。

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