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2022.04.28 00:14

【K+】vol.184(2022年4月28日発行)

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K+ vol.184 
2022年4月28日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter186 中西なちお
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.186 吉田由季
・特集 和を結ぶ菓子|松鶴堂
・フランスからの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉32
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.58|津野山茶@津野町
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第三十一回
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・+BOOK REVIEW
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真

※K+ vol.184(2022年4月28日発行)9ページ目の坊ちゃん劇場の広告内「ジョンマイラブ」公演日程について、5月5日(木)までの公演が中止となりました。詳しくは坊ちゃん劇場のHP、または電話089-955-1174にお問い合わせください。

特集
和を結ぶ菓子
松鶴堂

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

季節の移り変わりを感じる菓子を通して、
3代目の和菓子職人は日本の文化を伝えて。
5月の生菓子「唐衣」(手前)。「和菓子は、コーヒーや紅茶にも合いますよ」と千津恵さん

5月の生菓子「唐衣」(手前)。「和菓子は、コーヒーや紅茶にも合いますよ」と千津恵さん



菓子と日本文化のつながり

 「和菓子は、茶の湯や和歌、かさねの色目と呼ばれる、着物の色の合わせ方など、いろいろな日本文化とひも付いているところに面白さがあると思います」。四万十町窪川にある老舗和菓子店「松鶴堂(しょうかくどう)」の3代目・松岡幹幸さんが教えてくれた和菓子の魅力。それは、小さな菓子から広がる、季節の移ろいを大切にしてきた日本人の美学。
 松鶴堂の歴史は1954(昭和29)年から。幹幸さんの祖父が開業し、現在は2代目の父と母、妻の千津恵さんと家族で店を営みます。祖父の代から愛される銘菓に加え、幹幸さんはお茶席用の菓子を多く手がけます。
 幹幸さんが和菓子職人の道に進んだきっかけは、お茶席用の菓子の名店として知られる京都の老舗京菓子司「末富(すえとみ)」の本でした。小学生の頃にその本を読み、末富で学びたいと強く思ったと言います。大阪あべの辻製菓専門学校の先生の推薦で夢をかなえ、末富で5年間修業。その手が生み出す和菓子には、松鶴堂の代々の思いとともに、末富の考え方が息づいています。
 四季を味わうことが基本の日本文化が好きで、自身も茶道の稽古や茶花教室へ通う幹幸さん。家業に入って17年目。今願うのは、和菓子と、それに関する文化が未来に伝わること。




季節の移ろいをちりばめて

 茶の湯や年中行事とともに発展してきた和菓子。その一つ一つで季節感が表現されています。松鶴堂では、1カ月に2回程度、四季の変化に合わせて菓子が変わります。日本文化を特に深く感じられるからと、幹幸さんが好むこの時季の生菓子の一つが「唐衣(からごろも)」。平安時代の歌物語、伊勢物語で在原業平が詠んだ「かきつばた」という言葉を潜ませた和歌から名付けた菓子で、「かきつばた」の花の形から季節のイメージが湧きます。「お茶席では和菓子が主役ではないので、唐衣のように、主張しすぎず、単純な色や形から想像が膨らむような菓子作りを大切にしています」と幹幸さん。和菓子から四季や物語を発見し、風味を楽しむ。その時間は、感性を磨く、豊かなひとときなのだと感じます。





祖父が持っていた京菓子司「末富」の本に影響を受け、幹幸さんは和菓子職人の道へ

祖父が持っていた京菓子司「末富」の本に影響を受け、幹幸さんは和菓子職人の道へ


四万十町十和産の紅茶を使った「紅茶羹『広井の風』」は、冷やして食べる夏の和菓子

四万十町十和産の紅茶を使った「紅茶羹『広井の風』」は、冷やして食べる夏の和菓子



 代々、菓子作りに地域性を取り入れてきた松鶴堂。幹幸さんもまた、店のすぐそばにある四国八十八カ所霊場37番札所・岩本寺に伝わる空海七不思議にちなみ、「さくら貝」という名の干菓子を定番の品に加えました。また、窪川の生姜や大正の塩、十和の紅茶など、四万十町産の食材をようかんなどの棹物(さおもの)に使っています。その菓子を求め、地域の常連客や茶道愛好家、お遍路さんなどが店に足を運びます。
 訪れる人に届けるのは、和菓子の季節感だけではありません。店先では季節の花が、店内では季節の短冊や花が飾られた歌花筒が迎えてくれます。5月には、障子を簀戸(すど)に、のれんを紺から白に変えて夏仕様に。小さな店の各所で、四季を感じる日本の暮らしのしつらえに触れられます。


和三盆や白雪こう、干琥珀(こはく)、せんべいなどの干菓子のセット「四万十景色」。写真は初夏の品

和三盆や白雪こう、干琥珀(こはく)、せんべいなどの干菓子のセット「四万十景色」。写真は初夏の品




すぐ隣に四国八十八カ所霊場37番札所・岩本寺があるため、お遍路さんがよく休憩などで店に立ち寄る

すぐ隣に四国八十八カ所霊場37番札所・岩本寺があるため、お遍路さんがよく休憩などで店に立ち寄る



プロフィール
松岡幹幸さん
和菓子店「松鶴堂」の3代目。大阪あべの辻製菓専門学校を卒業後、京都の京菓子司「末富」で修業して帰郷。その菓子を求めて町内外から客が訪れる。四万十町出身。41歳

松岡千津恵さん
高知市の広告会社で営業として勤めた後、四万十町観光協会で勤務。4年前に幹幸さんと結婚。2020(令和2)年から店舗に立ち、接客を主に担当。四万十町出身。42歳




和菓子を楽しむきっかけに

 和菓子作りは、煮詰め具合など勘に頼る部分に難しさがあるという幹幸さん。その不完全さもまた自然界と通じ、和菓子の良さだとも。黙々と菓子作りに励む日々の中、お客さんの「上達したね」という言葉から、自身の成長に気付かされると言います。「お客さまに育てられています」と幹幸さん。贔屓(ひいき)にしてくれる方とのやりとりや、毎日の積み重ねが職人の技を高めるのです。
 催事やお茶席で使う菓子を求める方からは、要望を丁寧に聞き、大量生産せず、オーダーメードでの菓子作りにこだわります。「例えば、5個の注文から大人数の茶会まで、ご依頼主のお好みに合った物を納められる、小回りの利くところが家内工業の良さです」。修業時代に得た考え方です。
 2020(令和2)年からは、四万十町大正出身の妻・千津恵さんが共に働くように。




生菓子「唐衣」を作る様子。外郎(ういろう)の生地を作り、約20分蒸す。その後、生地を延ばして切り、つぶ餡(あん)を包んで

生菓子「唐衣」を作る様子。外郎(ういろう)の生地を作り、約20分蒸す。その後、生地を延ばして切り、つぶ餡(あん)を包んで


和菓子を知ってもらいたいと、学校の出前授業などに積極的に出かけているという幹幸さん

和菓子を知ってもらいたいと、学校の出前授業などに積極的に出かけているという幹幸さん



「主人やお客さまから和菓子や伝統文化など、これまで知る機会がなかった価値があることを教えてもらっています。学びながら、お客さまを迎えていきたいです」と千津恵さん。家族でお客さんを受け入れる形が整い始めました。
 若い人にも和菓子を気軽に楽しんでほしいと、同年、カフェスペース「喫茶去」を店内に設けました。喫茶去は、お茶でもどうぞ、という意味。「松鶴堂が和菓子を知る機会の一つになれるとうれしい。和菓子に興味を持ったら、ぜひ近所の店に通ってほしいです。地域の和菓子店が続くことが、和菓子を取り巻く、多くの日本文化を未来に残せることになるので」と幹幸さん。
 自分へのご褒美や、あの人へのお土産に。日本の春夏秋冬と文化に思いをはせられる和菓子をぜひ。





喫茶去では、季節の生菓子と抹茶のセットや、アイス最中、6~8月限定の抹茶かき氷などが味わえる

喫茶去では、季節の生菓子と抹茶のセットや、アイス最中、6~8月限定の抹茶かき氷などが味わえる





◎松鶴堂
四万十町茂串町3-10
問/0880-22-0265
営/店9:00~17:00 喫茶去10:00~15:00
休/木、毎月第2・5水
HP/https://shimanto-shokakudo.com
※生菓子は要予約

掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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