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2022.04.21 08:45

宝石サンゴの放精を初撮影 高知県大月町の黒潮生物研 受精解明へ前進

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アカサンゴが放精した精子嚢(黒潮生物研究所提供)

アカサンゴが放精した精子嚢(黒潮生物研究所提供)

 幡多郡大月町の公益財団法人黒潮生物研究所は20日までに、「宝石サンゴ」と称されるアカサンゴが水槽内で精子嚢(のう)を放精する様子を世界で初めて撮影したと発表した。水深100メートルほどの海底に生息するアカサンゴは観察が難しく、繁殖のメカニズムは不明。同研究所の目崎拓真所長は「放精の方法が明らかになり、受精までの経路解明やサンゴの養殖に向け一歩前進した」としている。

 宝石サンゴは米国などが近年、国際取引規制を提案するなどし、資源管理強化が課題となっている。同研究所は2020年から本格的に水槽内でのアカサンゴの繁殖研究に取り組んでいる。

水槽で飼育されているアカサンゴ。表面の白い毛のようなものがポリプ

水槽で飼育されているアカサンゴ。表面の白い毛のようなものがポリプ

 サンゴはクラゲの仲間で、「ポリプ」と呼ばれる1~3ミリほどのイソギンチャク状の個体が無数に集まった群体。宝石として扱われるのはサンゴの分泌物が固まった部分で、ポリプはその表面を毛のように覆っている。

 目崎所長らは、この「生きたアカサンゴ」を水槽で飼育。昨年6月から3カ月間、15秒間隔で休みなく複数のポリプを撮影した結果、雄の精子が入った精子嚢(約0・3ミリ)が出される様子を10回程度記録したという。

 浅瀬に生息する造礁サンゴ類は精子を直接海中に放出しており、アカサンゴでもそう予想されていた。このため目崎所長は「最初は雌の卵かと思った。サンゴの新たな放精の実態が明らかになった」と話す。

目崎拓真さん

目崎拓真さん

 撮影後は、高知大理工学部生物科学科の関田諭子研究室と共同で、放精したサンゴの一部を切断して調査。繁殖機能を持つポリプで作られた精子嚢が、共有する管を通って餌を食べるポリプに移り、その口から出されていることも、今回初めて分かったという。

 こうした成果は今年3月までに、水産庁や県、民間業者が参加するサンゴ国際取引に関する対策報告会の要旨集にまとめられた。

 アカサンゴは群体によって雄と雌に分かれており、黒潮生物研究所は5月にも同じ水槽内で飼育して受精や種苗生産につなげる試験を始める予定。目崎所長は「精子嚢をキャッチした雌のアカサンゴが、体内に取りこんで受精していると予想している。経路を特定し人工繁殖に弾みをつけたい」と話している。(坂本出)

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