2022.03.17 08:00
【プラ国際協定】急がれる海洋汚染対策
世界が一致して取り組む必要があるが、規制が厳しすぎると参加国が減る恐れもある。協定の在り方やルール形成の議論を深め、どう実効性のある仕組みをつくり上げるかが問われる。
経済協力開発機構(OECD)によると、2019年に世界で発生したプラごみは3億5300万トンに上り、20年前の倍以上に増えた。そのうち2200万トンが適正に処理されず汚染の原因になっている。
雨水で流れ込むなどして、既に世界の河川に1億900万トン、海には3千万トンがたまっているという。汚染が進み、生態系が打撃を受けている。プラごみを誤飲してしまい、多くの生きものが死んでいる。
人体への害も懸念される。プラごみが劣化して細かく壊れると、大きさ5ミリ以下の「マイクロプラスチック」となる。世界各地の生態系から検出されており、人間も食事を通じて年間5万個以上を摂取しているとの研究がある。長期的にどんな害を及ぼすのか、よく分かっていないだけだ。摂取のリスクをできる限り減らさなければならない。
プラごみ対策はこれまで各国任せだったが、国際的なルール作りに踏み出した意義は大きい。
決議では「プラスチックの持続可能な生産と消費を促進する」とし、原料調達から廃棄まで全ての段階で環境に配慮する重要性を指摘した。プラごみの管理強化と同時に使用量を削減し、ごみの量も抑える両面の対策が求められよう。
実効性を高めるには、多くの途上国の参加が欠かせない。廃棄物の管理体制が不十分で、プラごみの流出量も多いとされる。
先進各国は長年、プラごみを「資源」として途上国に輸出してきた。再利用に適さない汚れたものも多く、輸入した国で不法投棄が問題化。それらが流出し、海洋汚染の原因となってきた。
その責任に先進国は向き合うべきだ。日本もASEAN諸国などに押しつけてきた実態がある。途上国が規制に対応できるよう、技術協力や財政支援に努める必要がある。
国内では来月、企業などにプラ使用の削減を促す「プラスチック資源循環促進法」が施行される。私たち消費者も含めて、社会全体で対策に乗り出す時が来ている。
英国の財団は、50年には世界の石油使用量の2割をプラスチック部門が占めると推計している。プラ使用を減らし、再利用を増やすことは、循環型社会を目指す一助にもなる。
生活に浸透しているプラ製品の削減は容易ではない。大量消費の習慣から脱却が迫られる。どうやったら効果が上がるのか、世界で情報を共有しながら対策を進めたい。