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2022.03.15 08:00

【北京パラ閉幕】平和と共生をかみしめて

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 自らの可能性に挑む選手たちに、国際情勢の混迷が重くのしかかったことだろう。障害者スポーツの冬の祭典、冬季パラリンピック北京大会が閉幕した。
 平和の祭典は、開幕直前にロシアがウクライナに侵攻したことで戦時下での開催となった。障害者と健常者の「共生」や、違いを認め合う「多様性」という理念を大きく揺るがせてしまった。
 厳しい環境での大会に臨み、健闘した選手たちをたたえたい。ウクライナ勢は同国史上最多のメダルを獲得した。その姿は世界に反戦平和のメッセージを強く発した。
 日本勢も金メダル4個を含む計7個と活躍した。全力での躍動と満面の笑み、また悔しさをにじませる表情もあったが、それぞれに深い感動を残した。選手村では他国選手らとの交流もあっただろう。それらも含め、今後に生かしてもらいたい。
 開催国の中国は強化策が実り躍進した。それを継続できるかが問われることになる。日米英などが北京冬季五輪に続いて政府高官を派遣しなかったのは、新疆ウイグル自治区などでの人権問題が理由だ。そうした批判をかわすために、福祉政策を充実させたとの指摘もある。
 国威発揚のためのトップ選手だけの強化や、大会をにらんだ一時的な関与ではパラ運動の理念は浸透しない。こうしたことは言うまでもなく、中国だけに向けられるのではない。共生社会の実現へ、各国が真剣に向き合うべきことだ。
 残念ながら、今大会は「分断」が際立った。国際パラリンピック委員会(IPC)は開幕前日に、それまでの決断を覆してロシアと支援するベラルーシの除外を決めた。
 国連は昨年12月、北京冬季五輪・パラリンピックに合わせた休戦決議を採択している。政治的中立を掲げるIPCは、侵攻には決議違反を非難するにとどめ、いったんは国名などを使わない「中立」の立場で個人資格として出場を認めている。
 しかし、スポーツ界では両国を排除する動きが強まっていた。国際オリンピック委員会(IOC)は両国の選手、役員を国際大会から除外するよう各国際競技連盟などに勧告し、厳しい措置に踏み切った。国家の責任と個人は別ととらえたい。しかし、侵攻には極めて強い反発があり、IPCは毅然(きぜん)とした姿勢を示す必要があった。
 ロシアは国連安全保障理事会の緊急会合中に侵攻を始めている。また休戦決議に法的拘束力はないが、だからといって軽視してよいものではない。容赦なく国際秩序を踏みにじる態度は孤立を深めるだけだ。
 中国は、主権と領土の保全は尊重すべきだとする一方、合理的な安全保障上の懸念は重視されるべきだとの立場を繰り返す。ロシア非難を避け、制裁には反対して貿易継続の姿勢を貫いている。
 ロシアとの友好関係の維持は、対米政策上も不可欠なのだろう。だが国際社会に背を向けるようでは警戒感を高めてしまう。

高知のニュース 社説

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