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2022.03.13 08:00

【ウクライナ危機】露は非人道的攻撃やめよ

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 ロシアのウクライナ侵攻から2週間がすぎ、人道危機が一層高まっている。短期間で勝利するもくろみが外れ、国際社会によるロシア包囲網への焦りもあろう。民間人の犠牲もいとわない住宅地や病院、学校などに対する攻撃が続く。
 両国の外相会談設定や各国首脳による電話会談など、第三国の仲介も意に介さない様子だ。停戦の考えがないのかもしれないが、戦闘が長引くほど多くの命が失われ、ロシア側の損害も大きくなる。蛮行を即刻停止し、対話のテーブルに着かなければならない。
 侵攻当初はウクライナ軍による頑強な抵抗や補給が滞り、侵攻の遅れが指摘されていた。ここにきて態勢を立て直し、首都キエフへの攻勢を強めているほか、戦線拡大を図っているもようだ。
 一方的な武力侵攻自体が許されない上、「無差別攻撃」はなおさら看過できない。ロシア軍は「軍事施設のみを標的にしている」としたが、実際には数多くの病院、学校などが攻撃されている。
 南東部の激戦地マリウポリでは産科小児科病院が爆撃を受け、子どもを含め多数の死傷者が出た。東部ハリコフでは計48の学校がロシア軍に空爆された。到底容認できる行為ではない。強く非難する。
 両国の間ではこれまで3回、高官協議が開かれている。こうした惨事を回避するため戦闘地域から市民を逃がす「人道回廊」を設置することで合意していたはずだ。
 ウクライナ当局によると、計画した12回廊のうち4カ所しか機能していないという。いずれもロシア側が合意に反し攻撃をやめなかったとみられる。ロシアは「ウクライナ側が市民を人間の盾にした」と責任を転嫁するが、うのみにはできない。
 ロシアは軍事介入したシリア内戦で2016年、アサド政権とともに「人道目的」として、激戦地アレッポからいったん、市民に避難を促した。だがほとんど退避が進まない状況で猛攻を仕掛け、約2万人が死亡したとされる。
 戦意をそぐ狙いかもしれないが、実際に起こった悲劇は大量虐殺と変わらない。絶対に繰り返してはならない。
 強硬姿勢を貫くロシアは、外交面でも首をかしげざるを得ない場面が増えている。
 トルコの仲介によるウクライナとの外相会談では、一時停戦などの提案を一蹴。病院攻撃などを正当化した。さらに、米国がウクライナで生物兵器開発に関わっていると国連安全保障理事会の開催を要請。各国からロシア批判が続出した。
 特有のプロパガンダ(宣伝工作)に違いない。ただ、度を過ぎた自己正当化は、さらに国際社会の信用を低下させているように映る。
 かたくなに見えるロシアだが、各国による働き掛けは、それ自体が客観的な情勢を考えさせるきっかけになり得る。経済制裁をはじめとする圧力とともに、あらゆる対話の機会を通じて停戦への道を探りたい。

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