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2022.01.21 08:00

【バイデン氏1年】分断修復の難しさ鮮明に

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 米国の結束に全霊を注ぐ。そう誓ったバイデン大統領の就任から1年になる。だが分断の修復は道半ばだ。政策の停滞などで支持率は低迷し、巻き返しは簡単ではない。
 異例の就任式典だった。銃を持つ州兵らが警戒し、市民の立ち入りが制限される中で執り行われた。就任直前に、選挙結果を否定するトランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂を襲撃する事件が起きたためだ。
 民主主義を象徴する場所での暴力行為が、根深い分断と混迷を映し出す。バイデン氏は「民主主義は勝利した」と宣言したが、その足元は大きく揺らいでいることを見せつけた。今も、選挙で不正があったと考える共和党支持者は多いという。融和の道は険しいままだ。
 政権運営は、身内である民主党内の穏健派と進歩派の対立でも制約されている。人材育成や気候変動対策など政権の看板政策を盛り込む大型歳出法案は、与党をまとめきれずに成立が不透明になっている。
 法案には、中間層の底上げやトランプ氏を支持した労働者票を取り戻す狙いも込められる。それにもかかわらず説得ができないようでは指導力に疑問符がついてしまう。
 新型コロナウイルス対策は、トランプ政権下で停滞したワクチン接種を加速させマスク着用を促した。しかし各国同様、変異株「オミクロン株」が猛威を振るうようになった。経済への打撃を懸念して規制は強化せずにワクチンの追加接種を呼び掛けているが、一部には忌避感も根強く、対策への支持は定まらない。
 また、新型コロナ禍からの経済活動再開はサプライチェーン(供給網)の混乱を招き、物価高騰につながった。国民生活は圧迫され、くすぶる不満が支持率に響いている。
 一方、トランプ政権の「米国第一主義」と決別して、国際的な孤立から協調路線に復帰する姿勢は、温暖化対策の枠組み「パリ協定」への早々の復帰に表れた。
 外交安保は、台頭する中国をにらんで同盟関係の再構築を急ぎ、民主主義陣営の結束に向けて積極的に展開している。米国でも民主主義の土台は、連邦議会議事堂への襲撃が示すように盤石ではない。約110カ国・地域を招き「民主主義サミット」をオンラインで初開催し、「専制主義を押し返す」と訴えたのは、状況の厳しさの裏返しでもあるだろう。 
 信頼を傷つける場面も見られた。アフガニスタンでは駐留米軍の撤退を急いで混迷を深めた。オーストラリアへの原子力潜水艦の配備計画を巡りフランスと摩擦が強まり、「核兵器なき世界」への逆行が批判された。民主主義サミットに招待されなかった国との不和は避けがたい。
 唯一の競争国と位置付ける中国とはインド太平洋地域の秩序維持でにらみ合い、台湾を巡り対立する。ウクライナ国境で軍事圧力を強めるロシアとの緊張緩和も重要案件だ。
 政権与党が苦戦する傾向にある中間選挙を11月に控える。今後、対日要求が強まることが想定される。日本の対応も問われることになる。

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