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2022.01.19 08:00

【トンガ噴火津波】科学の限界意識し行動を

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 南太平洋のトンガ沖にある海底火山で大規模な噴火があり、津波が15日夜から16日にかけて、約8千キロ離れた日本列島の太平洋沿岸に到達した。高知県内では30隻近い漁船やボートが転覆したり流失したりする被害が発生している。
 地震による津波とは別のメカニズムだったとみられる。観測上の特徴が異なり、気象庁の対応が混乱する場面もあった。現在の科学ではまだ予測しきれない自然現象があることを見せつけられた格好だ。
 災害時には十分に情報を入手できない状況も考えられよう。限られた情報をどう命を守る最善の行動につなげるか。一人一人が防災意識の経験値を積み重ねたい。
 今回の津波は広く、太平洋沿岸の各国に達した。火山噴火が潮位上昇を引き起こす、まれなケースだったという。
 気象庁の予測が混乱したのは、地震による津波と比べ、火山噴火に伴う津波に関するデータの蓄積が少なく、科学的な知見が確立されていないためだったようだ。
 通常、地震による津波は、断層運動によって海底が隆起・沈下し、海底から海面までの水が大きく動くことで発生する。遠方の海で発生した場合、日本にたどり着くまでに複数の観測地点を経由することで、規模や到達時間が予測できる。
 今回、トンガと日本の間にある観測点では潮位の変化が数十センチにとどまっていた。このため気象庁はいったん、被害は出ない規模と判断したもようだ。
 だが、予想時間より2時間半も早く、各地で潮位の変化が観測され始めた。専門家からは、噴火で空気が激しく振動する「空振」という現象や、海底火山の一部が崩壊して津波が起きたとの見方が出ている。
 気象庁が沿岸部に津波警報や注意報を発表したのは、深夜になってからだった。結果的に住民の避難が遅くなったほか、漁船などの被害防止対策が難しくなった面は否めないだろう。
 経験則との違いに戸惑いがあったのも確かだろうが、メカニズムが分からない場合であっても、予報の目的は被害の最小化を図ることだ。注意の呼び掛け方に課題が残ったと言わざるを得ない。
 情報の受け手側も、科学が万全ではないことを改めて認識しておく必要がある。予報や観測技術が発展して信頼度は高まってきたとはいえ、まだ予測との誤差が起こり得ることを忘れてはなるまい。
 東日本大震災の教訓から、今回は深夜にもかかわらず大勢の住民が実際に避難した。これまでの防災・減災への取り組みの成果に違いない。最悪の状況を想定した避難行動を心掛けたい。
 大噴火に見舞われたトンガの被害は全容が判明していないが、津波や大量の火山灰による被害が懸念される。飲料水不足が深刻になっているとの情報もある。同じ火山国の日本にとって、決して人ごとではない。支援を急ぐ必要がある。

高知のニュース 社説

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