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2022.01.18 08:00

【施政方針演説】「信頼と共感」なお遠く

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 通常国会がきのう召集され、岸田文雄首相が就任後初めての施政方針演説を行った。
 最優先の課題は引き続き新型コロナウイルス感染対策だ。「想定以上に手ごわい」という認識は多くの人の思いと一致するに違いない。「全身全霊で取り組む」との決意を経済社会活動の本格化へつなげたい。
 政府がコロナ対応を、最新の知見に基づき冷静に進めるとするのは当然ではある。1年前の拡大局面では、当時の菅政権は慎重だった緊急事態宣言の再発令に踏み切らざるを得なくなった。対応の遅れが批判され、こうした流れが退陣につながった。それを思えば、岸田政権の姿勢をあえて示すことも必要だろう。
 首相は強力な変異株が現れるという最悪の事態を想定して対策に取り組んできたとも訴える。また、決めた方針でも良い方法があればちゅうちょなく改めると述べている。
 状況に応じた軌道修正自体は否定されることではない。ただ、その一方で思いつきのような施策の変更があったことは無視できない。関係者を混乱させては元も子もない。
 首相が訴える「信頼と共感」の政治姿勢には、その前段に丁寧な説明と丁寧な対話を置く。それを重ねていくことが基本となるはずだ。
 成長と分配の好循環による「新しい資本主義」も肉付けはこれからだ。デジタルの活用で地方からの成長実現を目指すとの意気込みに期待したいが、まだおぼろげな話としか受け取れない。長期的な対応であればなおさら、十分な説明と堅実な取り組みが必要となる。
 資本主義の負の側面が凝縮していると位置付ける気候変動問題を巡り、経済社会全体の大改革に取り組む意欲を見せる。特にアジアの脱炭素化への貢献を掲げ、有志国と取り組む考えを示す。世界的な課題であり、主導的な役割を果たしたい。
 核軍縮を巡り、首相は勇気を持って「核兵器のない世界」を追求すると訴え、「国際賢人会議」創設を掲げた。日本は核兵器禁止条約を署名・批准せず、締約国会議へのオブザーバー参加にも否定的だ。米国の反対圧力の中で首相なりの立ち位置を示したいのかもしれないが、より積極的に踏み込むことを求めたい。
 安全保障環境が厳しくなり、日米同盟の抑止力や対処力の強化が探られている。だが、今回の新型コロナ感染は水際対策で拡大までの時間を稼ごうとしながら、米軍基地がある地域で広がった。対策の穴があったと指摘されるように、同盟の在り方には厳しい視線が向けられる。
 施策の実効性を高めるには日米地位協定の見直しが不可避だが、首相は否定している。在日米軍の保健・衛生上の課題は地位協定に基づく合同委員会で議論すると述べ、大きな変更は期待しにくいようだ。
 国土交通省の建設受注統計の書き換え問題に言及はあったが、「政治とカネ」問題などには触れなかった。こうしたことに積極的な関与がないままでは、信頼と共感が得られるとは思えない。

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