2024年 05月07日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2021.11.17 08:00

【米中首脳会談】共通認識を信頼の構築へ

SHARE

 米国と中国の関係安定は国際秩序にとっても重要だ。バイデン大統領と習近平国家主席のオンライン会談が開かれた。顔合わせは初めてとなる。首脳対話を悪循環に歯止めをかける一歩としたい。
 米中間は台湾や人権、通商などの問題で対立が激化している。偶発的な衝突など不測の事態に陥らないよう意思疎通が欠かせない。
 会談では、緊張緩和につながる競争を管理する方法と、利益が一致する分野での協力方法に関して接近できるかが焦点となった。 
 両首脳は冒頭で「共通認識」を口にし、それを形成する必要性で一致した。バイデン氏は、米中間の競争が衝突に発展することを回避する責任を指摘しながら、「共通認識に基づくガードレールが必要」と言及している。 
 習氏は米中が意思疎通と協力を強めるべきだと述べ、「前向きな関係発展へ共通認識を形成し、積極的に行動したい」と応じている。そして、協力には健全で安定した関係が必要との認識を示した。
 双方は決定的な対立を望んでいないとみられている。中国共産党総書記3期目入りがほぼ確実視される習氏にとって、対米関係を安定化させたいはずだ。米側も対中競争を有利に進められる条件の整備をしたい思惑があるだろう。厳しい競争には徹底した外交が必要と、対話重視の姿勢を示している。
 だが、すべてで折り合うことは難しい情勢だ。台湾や東・南シナ海、新疆ウイグル自治区、香港では相違が際立ち、会談でもこうした問題で応酬があった。バイデン氏は人権や民主主義という価値観を重視する。習氏は領土や国家主権に関わる「核心的利益」と位置付けて干渉を容認しない立場を貫く。
 東・南シナ海や台湾周辺で中国は軍事圧力を強めている。極超音速兵器を含めた核開発の加速も懸念される。こうした動きに対し、米側は英豪と安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した。
 また、「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進へ、民主的な価値観を共有する日米豪印4カ国による協力枠組み「クアッド」を強化し、同盟・友好国と重層的な中国包囲網の構築を進めている。これらには中国の警戒感が強い。対中関係の極度の悪化を避けたい日本のバランス外交が試される局面でもある。
 こうした中でも、気候変動対策では協力も見られる。先日は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の目標達成に米中が協調して取り組む共同宣言を発表した。温室効果ガスの2大排出国が2020年代に行動を加速させるとした意義は大きい。
 オンライン形式とはいえ、対面に準じる会談へと進んだことは、過去2回の電話会談から積み上げた信頼の反映でもある。「新冷戦」を回避するために対話を志向する姿勢が欠かせない。首脳が意思疎通を図れば対話のパイプが大きくなっていくはずだ。協力できる分野をさらに広げる努力が求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月