2021.11.10 08:00
【経済対策】無駄の排除も欠かせない
支援策を巡り、焦点の一つに18歳以下の子どもへの一律10万円給付がある。衆院選で公明党が公約に掲げた。自民党も支援の必要性は一致し、岸田文雄首相は給付の意向を表明している。
コロナ禍は格差の拡大を強め、貧困対策の遅れを浮き彫りにした。苦しむ子育て世帯に対して支援が必要なのは間違いない。
ただ、その額や一律給付の効果には疑問も向けられる。所得制限を設けずに満額給付すれば2兆円程度が必要となる。富裕層を対象に加えるかどうかがまず論点となる。制限なしでは、ばらまきと世論の反発を受けかねない。自民内にも財政規律の面から慎重論は根強くある。
過去の給付は多くが貯蓄に回ったとの分析があり、子ども支援や消費刺激につながるのかは判然としない。生活困窮者向け支援との兼ね合いも無視できない。
自公は現金とクーポンの併用方針で一致した。所得制限の導入を巡り調整が続いているが、施策への疑問を解消する説明も必要だ。
対策にはほかにも、介護職や保育士、看護師らの処遇改善を盛り込むという。コロナ禍で顕在化した課題と向き合うことが欠かせない。
こうした一連の対策に、2020年度予算の繰越金30兆円超の一部や4兆5千億円の決算剰余金を使い、残りは借金である新規国債の発行で賄う意向という。国債発行の是非もさることながら、ずさんな使われ方がされないよう検証も怠れない。
新型コロナ対策費に関する会計検査院の報告では、予算額65兆円のうち21兆円が支出されず、21年度に繰り越された。使途がない状態になっている不用額は1兆円を超えている。予算を膨らませて取り組んでいると見せるようでは情けない。
また、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の抽出調査では、不正受給や過払いが13億円に上った。持続化給付金でも6億円近い不正受給があり、再委託が繰り返された実態も判明している。必要なところに急いで届けるべきお金が安易に取り扱われた責任は重い。
一方、経済対策の策定へ向け、政府の新しい資本主義実現会議がまとめた緊急提言は、国が複数年の財政支援をする「基金」方式が多く盛り込まれた。人工知能(AI)技術や先端半導体工場の国内立地の支援など、国の長期的な関与を示して民間投資を呼び込むという。
これには単年度主義の弊害是正を唱える首相の意向が反映されたようだ。しかし、基金は規模が膨らみやすい。また、国会の関与が弱まる恐れがあり、責任の所在が曖昧になって無駄遣いに陥りかねない。
コロナ感染は下火となり、経済活動は本格化へ向けた動きを強めている。それを確実にするための政策が求められる。優先順位を見定めて回復を後押ししたい。