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2021.08.05 08:00

【コロナ入院制限】全患者が守られるのか

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新型コロナウイルス感染症の入院対象を重症者らに限定する政府方針は、厳しい医療の現状を映し出す。
 インド由来のデルタ株の広がりで新規感染者が全国で1万人を超える日もある。病床不足への懸念が強まってきたことは間違いない。
 だが、中等症以上は原則入院だったことからの方針転換であり、不安や困惑が広がっている。与党からも撤回を含めた再検討を求められるなど、異論が出ている。
 感染を巡る甘い見通しが医療の危機を招いていることを政府は重く受け止める必要がある。症状の悪化に迅速に対応できる体制を整えず、自治体に判断をゆだねるだけでは混乱を大きくするだけだ。
 現在は重症者用の病床を確保するため、無症状や軽症の人は医師の判断で自宅や宿泊施設で療養している。中等症以上が原則入院だったが、政府の新方針では、肺炎などの症状がある中等症のうち、重症化リスクの低い人は自宅療養となる。
 都道府県は地域の感染状況を踏まえて、適用するかの検討を求められる。重症化リスクをどう判断するか、厚労省は示していない。
 これに対し、全国知事会側は、入院対象から外れる中等症患者の基準を明示するよう求めている。それぞれが独自の線引きをしては患者は動揺してしまう。同時に、地域の状況を勘案することもまた必要だ。
 政府は、病床が逼迫(ひっぱく)した地域では高齢者や基礎疾患がある人が自宅療養となる可能性があると説明する。ワクチン接種が進んで感染者や重症者の割合が下がっていることを考慮したようだ。
 しかし、確認時は無症状や軽症でも急激に悪化する例もある。春には大阪で重症者病床が埋まり、自宅療養中に死亡する事例が相次いだ。政府は入院要件を厳しくすることで病床を効率的に使いたい意向のようだが、増加が見込まれる自宅療養者の容体が急変した際に迅速に対応できるのか懸念は強まっている。
 これまでも保健所が定期的に健康状態を確認してきた。だが、感染者の増加もあって保健所の対応が追いつかない事態が危惧される。
 感染者の急拡大で医療逼迫の可能性が強まってきた。医療提供体制の見直しが迫られている。病床を増やす措置も取られてきたが、それを上回る感染状況は対応が十分でないことを示す。体制充実の必要性は繰り返し指摘されてきた。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を発令する地域の拡大や延長を行っていても、国民の理解と協力を欠けば感染抑制への効果は限定的となる。
 対策は急がなければならないが思いつきでは効果は期待できない。宣言や重点措置地域の飲食店で酒類提供の禁止が守られないとして打ち出した施策が、批判を受けて撤回に追い込まれたことがある。政策検討の熟度不足を露呈してしまった。
 「国民の命と健康を守っていく」と菅義偉首相は言う。当然のことだ。そのための具体的対応を堅実に積み上げていく必要がある。

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