2021.09.12 08:00
小社会 マララさんの声
ノーベル平和賞の受賞者マララ・ユスフザイさんの記事がきのうの本紙に載っていた。「女子教育は平和と安全を築くための強力なツール(手段)」だと、国連安全保障理事会の会合で訴えたとある。
2001年9月11日の米中枢同時テロから20年。紙面にその関連ニュースが目立つ中、マララさんの記事は大きな扱いではないが、改めて耳を傾けたい内容だった。
パキスタン人の彼女もまた9・11の被害者といっていい。テロ後、米軍がアフガニスタンに侵攻し、旧タリバン政権を追い出したはいいが、タリバンはパキスタン北部に逃れて一帯を支配した。マララさんは15歳だった12年、男に銃撃され、瀕死(ひんし)の重傷を負う。
女子教育を禁じ、学校を破壊するタリバンに対し、インターネットで抗議を続けたため狙われたようだ。それでも彼女はひるまなかった。回復した翌13年、国連で演説し、教育、特に女子教育の重要性を説いて国際社会の協力を求めた。
当時の言葉が忘れられない。「タリバンの子どもたちも教育を受けられるように」。自分を撃った男は憎んでいないとも述べた。テロの悲劇は憎悪や報復の連鎖にある。マララさんは教育の力でそれらを断つ願いを掲げたのだろう。
その演説から8年が過ぎ、マララさんは現在24歳。今も発信を続けている。アフガンでタリバン政権が復活する中、彼女の運動が無に帰すような世の中であってはならない。