2025.08.26 08:35
レンタル自転車、利用好調 夜、広島市中心部から消える? 通勤・観光で需要増 高知の利用状況は?【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

1台あるだけでがらんとしているポート(5月20日午後7時5分、広島市中区大手町)
5月中旬の平日午後8時。広島市役所が近い中区大手町のサイクルポートは50台が駐輪できるが、空になっていた。近くで働くアルバイト男性(20)は「ここ1~2年かな。利用者が多くなったのは。昼間は40~50台が止めてあるけど、夜になると全くない」と話す。同じ時間帯、近くの別のポートも同様で、あってもわずかな台数だ。
利用可能な自転車は約千台で、ポートは平和記念公園や紙屋町・八丁堀周辺から約5キロ圏内に約160カ所ある。地図上でポートの位置と貸し出し可能台数を示す機能がある専用アプリを使って夜の現状を調べた。なるほど。平日と休日の5日間、定点観察すると、異変の一端が見えてきた。
ぴーすくるが、日中は集中する中心部から消え始めるのは午後5時ごろ。9時には紙屋町・八丁堀周辺の大半のポートで利用可能な自転車がないことを示す「0」が並ぶ。同じ時間帯、広島や横川、西広島のJR駅周辺、南区宇品地区や中区舟入地区など中心部から2~5キロ圏内に多くあることが分かった。翌日朝までほぼ動きはなく、午前10時ごろになると、中心部に戻っている。
調べた結果は、夜間の中心部の「空洞化現象」と翌朝の「都心回帰」。休日は回帰の動きが鈍いことも分かった。もしかすると、通勤での利用か。そんな推測は、夕方の中心部での利用者への取材で確信に変わった。声をかけた10人全員が、会社員だった。
「路面電車が値上がりしたので、広島駅から会社までの短い距離で使っている」(広島県府中町の37歳男性)、「交通の便が悪く以前は徒歩通勤だったが、自宅近くにポートがあるのを知った。乗り捨てできて使い勝手が良い」(南区の28歳女性)などの声を聞いた。
ぴーすくるは2015年、観光客向けのレンタサイクルとして市がサービスを開始。60分165円で利用できるプランなどがある。当初は主に中心部と広島駅周辺の14カ所だったポートは、徐々に放射線状に広がり利便性が向上。新型コロナウイルス禍での公共交通機関の混雑回避や、路面電車やバスの運賃値上がりに伴い、通勤や帰宅の需要も高まっている。
管理を請け負うツアーズ広島(南区)の田中真一・国際観光部長は「日中は外国人の利用が目立ち、需要はひしひしと感じている」と強調。通勤で使う西区の会社員男性(52)は「メンテナンスしなくていいから楽。最近は夕方、争奪戦になっている」と話す。日中は観光客、夜から朝にかけては通勤や帰宅の市民。利用は、うまくすみ分けができているようだ。(中国新聞)
【ズーム】ぴーすくる
広島市が2015年に始めたシェアサイクル。23年度の利用は過去最多の100万回超で、24年度はさらに上回ったという。中、東、南、西の各区と広島県府中町にサイクルポートがある。専用サイトで会員登録し、利用する。料金プランは60分165円の1回会員、30分以内は乗り放題の3300円の月額会員、1日乗り放題で1100円の1日会員などがある。現在は利用者の8割程度が市民。24年4月からは市から運営を移管されたドコモ・バイクシェア(東京)が手がける。
▼高知では
利用者9割が観光客 通勤利用へ料金変更も検討
高知市は2023年3月、シェアサイクルサービス「PiPPA(ピッパ)」をスタートさせた。全国展開する民間事業者のシステムを導入し、市内6カ所の専用駐輪場に自転車30台を配置。当初は利用も伸びていたという。
ところが、24年9月にこのサービス委託業者と連絡が取れなくなった。業者の代理人弁護士から債務整理の開始を通知する書面が届き、サービスを停止する事態になっていた。
県都の中心市街地から公的なシェアサイクルサービスは消えたが、今年4月には民間がサービスを“復活”。コインパーキングなどを手がけている「ダイセイ」(同市南川添)が、電動アシスト自転車でのサービスを始めた。
専用駐輪場は、JR高知駅前、東洋電化中央公園、おまち多目的広場南側、はりまや橋観光バスターミナルの4カ所。全国で導入されている「コギコギ」(東京都)の管理システムを採用し、スマートフォンのアプリで24時間利用できる。
高知駅から市中心部の職場へ通勤で使っている人もいるかと思いきや、ダイセイの担当者は「いやぁ利用者の9割が県外や海外の観光客なんです」。
広島市のように通勤での利用が多い大都市では「60分」など短時間でのレンタルにも対応しているというが、高知市ではそもそも観光客の利用を想定。利用の時間や料金も最短3時間(1500円)からで、自転車もまだ20台という。
ただ、今後は駐輪場を増設することも検討しているといい、ダイセイの担当者は「観光スポットに一定設置した後、利用されていない自転車が増えてくるようであれば、通勤でも利用しやすいように料金設定を見直したい」としている。(山崎友裕)
県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。
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