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2024.10.07 05:00

【核燃料中間貯蔵】むつ住民の不安は当然だ

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 青森県むつ市にある使用済み核燃料の中間貯蔵施設が、来月にも正式に操業を始める。それを前に東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)から、保管する燃料の初の運び込みも行われた。
 燃料は再処理工場で化学処理するまで一時保管する。運営会社は保管期間を「最長50年」とし、期限までに施設外に搬出すると地元に約束している。
 だが、現時点で国内に完成済みの再処理工場はない。つまり、前提条件が整わないまま、保管だけが始まったことになる。
 約束は守られるのか。恒久化しないのか。住民の不安が拭えないのは当然だろう。
 政府や原発業界は、施設の安全管理はもちろん、保管燃料の取り扱いに重い責任がある。将来世代への問題の先送り、押し付けにしてはならない。
 原発で使い終わった燃料は強い放射線や高い熱を出すため、国内では原発内の燃料プールに貯蔵し、数年単位で冷却する。一部は青森県六ケ所村に建設中の再処理工場の燃料プールにも保管してきた。
 日本は国策として、使用済み燃料を全て再処理してプルトニウムやウランを取り出し、新たな燃料として再利用する「核燃料サイクル」を目指している。その中核が六ケ所村の再処理工場で、日本原燃が1993年に着工した。
 ところが、工場は30年以上たったいまも完成していない。現行の完成目標は「2026年度内」だが、過去27回も目標を延期。もはや信頼性がないに等しい。
 この間、全国の原発には使用済み燃料が増え続け、保管容量は次第に逼迫(ひっぱく)。東電と日本原子力発電が、両社の原発の使用済み燃料を保管するため、むつ市の中間貯蔵施設を建設した。長期保管を念頭に金属容器に入れて保管する。
 矛盾はこれにとどまらない。
 核燃料サイクルは、取り出したプルトニウムを高度利用する高速増殖炉の活用が本命だったが、研究炉のもんじゅ(福井県)にトラブルが相次ぎ、廃炉が決定。プルトニウムを一般の原発で燃やす「プルサーマル発電」に主軸が移った。
 しかし、東電福島第1原発事故が起き、原発の安全性が問われる中、原発の再稼働には限界がある。再処理・再利用の必要性自体が揺らいでいるといってよい。核燃料サイクルはもはや破綻している。
 そんな中での中間貯蔵施設の始動である。国内には核のごみの最終処分場もない。むつ市民らがこのまま「永久保管になるのでは」「最終処分場になるのでは」と懸念するのは無理もない。
 使用済み燃料問題は原子力を利用する以上、避けて通れない問題だ。原発政策のつけや失敗をこれ以上、大きくするわけにはいかない。
 国内では、関西電力と中国電力も共同で別の中間貯蔵施設建設を検討しているが、問題は同じだ。責任ある論議が求められる。

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