2024.06.21 08:40
漢字採点 厳しすぎませんか? ×ばかり 登校嫌がる児童も【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

数多くのバツが付けられた漢字テストの答案用紙(東京都内の40代母親のブログから)
中日新聞ユースク取材班に情報を寄せた母親が不満を漏らす。「はらいが甘い」「線が真っすぐじゃない」などの理由で「×」にされ続けた子どもは「学校に行きたくない」と言い始めたという。
東京都内の40代女性も、ブログに「採点厳しすぎませんか」と記した。子どもは漢字の50問テストで、100点満点が取れたと自信満々だったが、結果は38点。「とめ・はね・はらいなどに気をつけて書こう」と赤字で添えられていた。母親は「不正解の理由が分からないものもあった」。子どもは翌日、初めて登校を拒否したという。
漢字はどこまでどう教えるのが正しいのか。
文部科学省の担当者は「指導の根拠は『学習指導要領の解説』に書かれている」。その解説は、文化庁が出した「常用漢字表の字体・字形に関する指針」を引用。「字体」は骨組み、実際に形に表された「字形」は同じ文字と認識される範囲で「無数の形状」を持つと説明し、正しい字体を前提に「柔軟に評価することが望ましい」とする。
ただ、漢字と書写の学習は「文字を正しく整えて書くことができるよう、指導の場面や状況に応じて一定の字形を元に学習や評価が行われる場合もある」とも言及している。
専門家はどう見るか。
漢字の歴史に詳しい京都大の阿辻哲次名誉教授(中国文化史)は「『とめ、はね、はらい』などは枝葉の問題」。大、犬、太や申、由、甲など、点の有無や線の突き抜け方で字体が異なる場合は「厳密に区別する必要がある」が、木へんの2画目をはねるかどうかは「デザイン差であって字体差ではない。どちらも正解」と言う。漢検を実施する日本漢字能力検定協会もホームページに「誰が見てもその字であると判断できれば、細部のとめ、はね、はらいなどの書き方によって不正解にすることはない」と記す。
厳しすぎる指導について、阿辻名誉教授は「先生は一つの採点基準がほしいのかも」と推測。「図形テストのように教えては窮屈。子どもたちが縮こまってしまう」と心配した。では、漢字好きの子どもに育てるためにはどうしたらいいのか。阿辻名誉教授に尋ねると、「カラスって漢字あるでしょう?」。“特別授業”が始まった。
「鳥」の4画目の横棒は目を示すが、真っ黒なカラスの目はどこにあるか分からない。だから横棒のない「烏」と書いたとか。「象形文字の成り立ちを教えるなど、『漢字は面白い』と興味を持ってもらいたい」。なるほど。一気に漢字に興味が湧いてきた。(中日新聞)
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