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2023.12.27 08:00

小社会 こんなふうに生きていけたなら

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 公開中の映画「パーフェクトデイズ」は公衆トイレの清掃を仕事としている男の物語である。その業務の常として中断がある。「清掃中」の看板は立てている。けれど急用の人たちは遠慮がちに、あるいは無遠慮に使用する。そのたび清掃は滞る。

 役所広司さん演じる清掃員「平山」は、常に平然と利用者を受け入れる。言うまでもなくトイレはそのためにある。愕然(がくぜん)とするのは、その中断を平山が楽しんでいるように見えることだ。

 中断を神から与えられた休憩のように過ごすのである。トイレの入り口にたたずみ、周囲の風景の中で移り変わっていく光と影を追っている。いま、ここにいること。いま、ここにある美しさを発見して味わうこと。彼の趣味の一つはモノクロのフィルムカメラで木漏れ日を撮影することだ。

 古いアパートで独り暮らす。未明に起きて缶コーヒーを買ってから清掃に出掛ける。夕刻には決まった銭湯と居酒屋に通う。夜は寝床で幸田文やフォークナーの文庫本を読んで眠る。そしてまた朝がやって来る。

 けれど、昨日と今日は決して同じではない。彼が毎日撮影する木漏れ日の写真は、そんな彼の祈りと信念のようでもある。

 平山は毎朝アパートを出る時、空を見上げて充足の表情を浮かべる。果たして私たちは平山のような満足した毎日を生きているのか。〈こんなふうに生きていけたなら〉。映画のキャッチコピーが胸に迫って仕方ない。

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