2026.03.23 05:00
【旧姓使用法制化】根本的解決にはならない

法案提出の動きが加速しかねず、選択的夫婦別姓の実現が遠のくとの懸念は根強い。あらためて慎重な議論が求められる。
選択的別姓の導入に慎重な立場をとる高市早苗首相は、かねて旧姓使用の拡大を主張してきた。自民党と日本維新の会が昨年結んだ連立政権合意書には、戸籍上の夫婦同姓を維持しながら、旧姓使用に法的効力を持たせる制度を創設すると明記。そのために関連法案の成立を今年の国会で目指すとしている。
現在はパスポートや運転免許証、マイナンバーカードなどの公的証明書に旧姓を記載したい場合、戸籍名を併記する必要がある。旧姓の単記は認められていない。政府の狙いが実現すれば、旧姓で生活できる場面は広がる。不便の解消が期待される面もあるだろう。
ところが、具体的な利便性はいまひとつ見えてこない。首相は先日の参院予算委員会で、パスポートなど厳格な本人確認で用いられる証明書は、旧姓使用拡大の対象外になるとの認識を示した。利用できる場面は限定的になる可能性がある。
公的な姓が二つあることでさまざまな混乱も危惧される。自治体や企業は管理面で膨大な費用や手間を迫られる恐れも指摘される。海外では理解されにくく、出入国などの際にトラブルが起きかねない。
ジェンダー不平等の問題も残る。結婚に伴って姓を変えた女性は9割を超える。女性に負担を強いる現状は変わらない。
何より、人格権にかかわる根本的な問題の解決にはならない。旧姓の単記が認められても、戸籍上は同姓のままだ。改姓に伴う自己喪失感は消えない。旧姓使用の拡大は選択的別姓の代わりにはなり得ない。
一方で計画は、選択的別姓については国民の意見や国会の議論を注視し検討を進めるとする。
国連の女性差別撤廃委員会のほか、経団連や連合も別姓制度の導入を求めている。政府はこれ以上、問題を放置してはならない。
第6次計画を巡っては、策定プロセスに異議も出ている。旧姓使用に「法的効力を与える」との文言が、有識者会議の議論を経ないまま答申案に記載されたからだ。
有識者会議が昨年夏に取りまとめた素案では、第5次計画の表現を踏襲し「旧氏(旧姓)の通称使用の拡大や周知に取り組む」としていた。だが、自民と維新の連立合意を踏まえ、内閣府が急きょ加筆。連合などから反発を受け、答申は見送られ、策定は今年に持ち越された。
合意形成の過程を軽視し、政権の意向を反映させることは到底認められない。政権への忖度(そんたく)ではないかとの批判ももっともだ。異なる意見にも耳を傾け、丁寧に議論を積み重ねる必要がある。























