2025.12.21 05:00
【日銀が利上げ】物価抑制の重い課題

日銀は政策金利を0・5%程度から0・75%程度に引き上げることを決めた。30年ぶりの高水準となる。
米国の高関税政策の悪影響は想定より小さく、企業収益の維持を見込んだ。12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感は3四半期連続で改善した。来年の春闘でも賃上げに向けた動きが継続するとみて判断したようだ。
植田和男総裁は、今後も経済・物価が想定通り推移すれば引き続き利上げする意向を示した。利上げ後も金利水準は極めて低く、緩和的な金融環境は維持されると強調した。
利上げは預金金利の上昇の一方、ローン返済額が増えて暮らしへの打撃となりかねない。資材の高騰や人材不足、賃上げ圧力に直面する中小企業からは困惑の声が上がる。悪影響の側面に警戒する必要がある。
日銀は10月には、米高関税政策の影響を見極めるとして利上げを見送っている。利上げに前向きな発言もあったが、経済最優先で緩和的な金融政策を志向する高市早苗首相の就任が流れを変えた。
首相は積極財政で景気を下支えする考えで、景気を冷やしかねない利上げに消極的だ。ただ、外国為替市場は日米金利差を意識した円安ドル高が進む。輸入する食料やエネルギーなどの価格を改定する動きが相次ぐ。高止まりする物価に賃上げが追いつかず、実質賃金は低下して家計を圧迫している。
利上げ先送りは輸入物価を一層押し上げかねない。利上げで金利差が縮小して円高に転じると物価上昇が抑えられる可能性がある。首相は物価高対策を掲げるだけに、利上げを全面的には否定できないようだ。米政権が対日貿易赤字を悪化させかねない円安ドル高を厳しく見ていることも影響しているだろう。
今会合での利上げへ、植田氏は確度が少しずつ高まっていると前向きな姿勢を見せてきた。また、政治状況にかかわらず金利調整する考えを示し、環境を整えた。
市場は日銀が政権との関係をどう築くかを注視している。独立性の維持や政権との意思疎通、市場との対話が引き続き問われる。
米連邦準備制度理事会(FRB)は先ごろ、主要政策金利を0・25%引き下げて3・5~3・75%とした。悪化の懸念がある雇用情勢を下支えする。一方で、インフレを加速させる恐れを重視した反対意見も出て、対立が鮮明になった。
来年は大幅利下げを迫るトランプ大統領がFRBの後任議長を指名する。政権との距離感を市場が注視するのは日本と同じだ。日本にも影響する金融政策の動向にこれまで以上に関心が向けられることになる。
国債市場では長期金利の上昇が続いている。高市政権の「責任ある積極財政」は、財政規律と向き合わなければ金利の上昇圧力を強める。注意深く対応する必要がある。



















