2025.12.12 05:00
【病院の経営悪化】地域医療守る手だてを

厚生労働省の2024年度の医療経済実態調査によると、一般病院の1施設当たりの利益率は7・3%の赤字となった。7割以上が赤字に当たる。
中でも不採算分野や非効率地域を担うことが多い自治体病院の業績が悪い。総務省調べで、全国844の自治体病院の24年度の赤字総額は前年度の2倍近い3952億円に上り、8割以上が赤字だった。地域の高度医療を担う全国44の国立大学病院の赤字も、過去最大の計285億円となっている。
県内の拠点病院では、高知医療センターが12億6700万円の赤字で、赤字幅は10年度の直営化以降最大に。あき総合、幡多けんみんの2院を運営する県立病院事業の赤字も、2院体制では最大の計11億9300万円となった。
経営悪化の主な要因はコスト高を料金に転嫁できないことだ。医療機関が診療や手術などの対価として受け取る診療報酬は2年おきに改定される公定価格のため、足元の物価上昇分を反映させにくい。新型コロナウイルス関連の補助金がなくなったことも状況悪化に拍車をかけた。
医療機関の経営難は地域の医療サービスの低下を招きかねない。民間調査機関によると、24年の医療機関の倒産は64件で過去最多だった。拠点病院の診療科の廃止、再編などにつながった例もある。大学病院の力が衰えれば、医師育成、地域への人材供給、医療の研究開発機能なども後退する。
もちろん医療機関それぞれの経営努力も問われるが、それのみではカバーしきれない構造的な課題があるのが実情だろう。25年度はさらに業績が悪化しているとみられる。このまま看過できない。
高市政権は25年度補正予算案に、資金繰りや施設整備、賃上げなど医療機関の物価高対応の支援に1兆円余りを計上した。これらの応急的な措置とともに焦点となるのが、26年度に予定されている診療報酬改定だ。政府は議論を本格化させており、年末までに結論を出す。
業界団体は大幅な報酬アップを求めている。ただ、大幅アップは窓口の支払いや保険料などとして国民の負担増につながる可能性が高い。高齢化や治療の高度化によって医療費自体が膨張基調にある中、高市政権は現役世代の保険料の抑制、引き下げも掲げている。
医療機関の経営改善と国民負担の適正化の両立に向け、バランスのとれた対応が求められる。その過程で避けて通れないのが医療費の抑制策であり、社会保障改革に関する個別テーマの議論も具体化してきた。医療費を無駄に膨らませるサービスは効率化するべきだが、命と健康にかかわるテーマだけに、慎重な検討と丁寧な合意形成も求められる。



















