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2025.12.09 08:45

【全文公開】絵本の「ちょうど良さ」とは? ヨシタケシンスケさん×柴田ケイコさんスペシャル対談 制作の裏側、悩み語る―ココハレ ピックアップ

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ヨシタケシンスケさんと柴田ケイコさん。人気絵本作家2人の対談が実現しました(写真はいずれも高知市の県立美術館、河本真澄撮影)

ヨシタケシンスケさんと柴田ケイコさん。人気絵本作家2人の対談が実現しました(写真はいずれも高知市の県立美術館、河本真澄撮影)

 絵本作家、ヨシタケシンスケさんの展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない」が高知市高須の高知県立美術館で開かれています。子育て応援ウェブメディア「ココハレ」では開催を記念し、ヨシタケさんと柴田ケイコさんのスペシャル対談を企画。1973年生まれの同い年で、イラストレーターを経て絵本作家としてデビューした2人に、お互いの印象や制作の裏側、悩みを語ってもらいました。

展覧会には子どもが楽しめるアトラクションがたくさん

展覧会には子どもが楽しめるアトラクションがたくさん

■私の指針
 2人の出会いは2017年の「MOE絵本屋さん大賞」。デビューはヨシタケさんが13年、柴田さんが16年。柴田さんにとって、ヨシタケさんは「指針」でした。

 柴田「ヨシタケさんはこの業界の大先輩! イラストの仕事をしながら絵本の世界に入った点が似ていて、指針になりました。お話が面白いですよね。『りゆうがあります』はうちの息子のことみたい!」

 ヨシタケ「それはすごくうれしいですね」

 柴田「絵本の世界には『絵は画家さんに任せて、ストーリーは別の方で』『美しい絵じゃないといけない』というのがあったと思うんですけど、ヨシタケさんの登場で覆された。こういう絵本ができていいんだと思いました」

 ヨシタケ「ありがとうございます。柴田さんに初めて会った時は納得感がありました。作品は作家の分身なので、『この作品を描いたのはこの方だ』と」

 柴田「うれしい!」

 ヨシタケ「『パンどろぼう』をはじめ、どんどん大ヒットを出され、周りの環境は大きく変わっていっただろうに、柴田さんは全然変わらないのがすごい」

 柴田「めっちゃ今、汗かいてます」

 ヨシタケ「謙虚さを維持することって、できる人とできない人がいる。長く続けていく秘訣(ひけつ)だし、変わらないものを持っている強度みたいなものがやっぱり作家ゆえなのかな」

■一生懸命書いてます
 ヨシタケさんの絵本には手書きの文字がたくさん出てきます。

 柴田「ヨシタケさんは字がかわいい。『ヨシタケフォント』ができますよね」

 ヨシタケ「僕、一生懸命書いてこれなんですよね。こう書こうとして書いているわけじゃなくて」

 柴田「そうなんですか?」

 ヨシタケ「昔から『字が汚い。丁寧に書きなさい』と言われて、習字とか習わされたりして。でもずっと変わらない。それが今、売り物になってる。当時、僕を叱り続けた先生にお礼を言いたいなと(笑)」

ヨシタケさんの頭の中はどうなってる? アイデアスケッチなどで絵本ができる過程をたどります

ヨシタケさんの頭の中はどうなってる? アイデアスケッチなどで絵本ができる過程をたどります

 柴田「私は大きな展開の時は手書きですが、普通の文章は絶対無理。文字がデザイン化されている方は、引き出しがいっぱいあってうらやましい」

 ヨシタケ「絵本におけるテキストの役割が、僕とは随分違いますよね。柴田さんは割と状況説明の方がメインだったりする。本来、絵本ってこうあるべきなんですよ。僕は隙間産業なので(笑)」

 柴田「隙間産業(笑)。すてきです」

■「かもしれない」
 人気作を次々と発表してきたヨシタケさんと柴田さん。制作過程では思い悩むことも多々あるそうです。

 柴田「ヨシタケさんはいろんな心情をくすっと笑えるように、絶妙にうまいバランスで展開できている。いつも感心します」

 ヨシタケ「絵本が商品として成り立つ時に必要な『ちょうど良さ』がある。普通過ぎてもとがり過ぎても駄目で、ちょうどいい脱線の仕方とか、ちょうどいい分かりやすい展開とか。たくさんの方に受け入れてもらうためには『ちょうど良さ』がすごく大事」

 柴田「デビュー作の『りんごかもしれない』から、『ちょうど良さ』は一発で出てきたんですか?」

 ヨシタケ「編集者さんに調整していただきました。足りない部分を継ぎ足すアドバイスを頂けて、『こういうことか』と」

 柴田「自分の世界はありますけど、やっぱり商品なので。葛藤もありつつ、意見をいかに柔軟に受け止めて作品にするか。なんかこう、筋トレをさせられてるなっていう感じ(笑)」

会場にはコレクションも並んでいます。「ヨシタケが普段、どれだけ気が散ってるか」を表しているそう

会場にはコレクションも並んでいます。「ヨシタケが普段、どれだけ気が散ってるか」を表しているそう

 対談では展覧会のタイトルにもある「かもしれない」にも話が及びました。

 柴田「『かもしれない』って、いろんなことがOKになる自由な言葉」

 ヨシタケ「このキーワードを出せたのは、僕にとって幸せだったなと。悪用し放題です(笑)」

 柴田「『逃げていいんだよ』という言葉。多くの人が助かってると思います」

 ―ヨシタケさんの絵本では「ころべばいいのに」のタイトルに驚きました。ネガティブなテーマですし、言っては駄目な言葉とされてもいます。

 ヨシタケ「これは大変でしたけど、すごく作りたい本でした。存在するものをないことにしない。確かにあるものに、ちゃんと名前を付けていく。言い方さえ気をつければ、こういうテーマもエンターテインメントになり得る」

 柴田「そこも、センスがないと、なかなか…」

 ヨシタケ「そういう時に絵本っていいなと思います。際どいことを言っても、横にかわいい絵を描くとスルーしてくれる」

 柴田「分かります。だから、ちょうどいい」

 ヨシタケ「絵と言葉の組み合わせじゃないとできないこと、表現し得ないことはたくさんある。やればやるほど、奥が深いものだなと思います」

 今回は2人の対談のほんの一部をご紹介しました。まだまだ続くおしゃべりをココハレで紹介しています。ぜひご覧ください。(門田朋三)

【対談全文はこちら】(ココハレのサイトに移動します)
ヨシタケシンスケさん×柴田ケイコさん…大人気絵本作家のスペシャル対談が実現!

◆「ヨシタケシンスケ展かもしれない」1/12まで 高知県立美術館
 「ヨシタケシンスケ展かもしれない」では、ヨシタケさんが絵本作家としてデビューする前から描きためてきたスケッチや、絵本の制作過程をたどるアイデアスケッチ、原画などが展示されています。うるさい大人にリンゴを投げるアトラクションなどの仕掛けもあり、絵本の世界を体感できます。県立美術館で1月12日まで。12月27日~1月1日は休館。

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