2025.08.14 05:00
小社会 80年目の自我

ある店主は日本刀を抜き、刃をじっと眺めている。日本はどうなることかと思った。しかし、終戦の詔勅を聞いた帰り道は商店街の空気が一変していたという。「祭りの前日のように、浮々(うきうき)とした表情で立ち働いていた」
黒沢監督は、放送が終戦ではなく「一億玉砕」を呼びかけていたら、あの人たちはそれに従っただろうと危惧した。日本人は「自我を悪徳として、自我を捨てる事を良識として教えられ…」「その自我を確立しない限り、自由主義も民主主義も無い」と自伝に書いた(中川右介著「昭和20年8月15日」)。
自我を失わせた一因は何か。作家の半藤一利さんは、開戦は軍部だけの独走とも言い切れないとした。多くの国民は緒戦の勝利に喝采し、新聞は政府や軍部以上に戦争をあおった―と。
あすで終戦から80年。先の世論調査では、戦後憲法を評価する点に8割の人が「戦争放棄・平和主義」を挙げた。ただ、戦争体験者は3%。親などから聞いて知る人も2割。記憶の継承が問われる時代になっている。
戦後50年から10年おきに続いた「首相談話」がことしは出ないという。政治の事情はどうあれ、体験世代から引き継ぐ、平和を望む「自我」は守りたい。




















