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2025.05.16 05:00

【障害年金不支給】判定の客観性を高めよ

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 障害者に支給される国の障害年金を申請して2024年度に不支給と判定された人が約3万人と、前年度の2倍以上に急増していた。日本年金機構の内部資料で分かった。
 機構が統計を取り始めた19年度以降最多で、審査された6人に1人程度が不支給になった計算となる。
 機構の担当部署である「障害年金センター」のトップ交代が要因との内部証言がある。生活の支えである障害年金の判定が属人的な要素で左右されているとしたら、制度の信頼性が揺らぐ。客観性や公平性のある仕組みに改める必要がある。
 障害年金は公的年金制度の一つで、病気やけがで障害があり、条件を満たせば現役世代でも受け取れる。「基礎」と「厚生」の2種類があり、障害の重い順に1~3級に分かれる。基礎年金の1級で月約8万6千円支給される。障害者手帳とは別の制度になる。
 申請は、主治医に書いてもらった診断書などの書類を市区町村役場などに提出する。同センター職員がその書類を事前に審査し、委託を受けた判定医が最終的に支給の可否や障害の等級を決める。
 24年度は推計18万~19万人が新たに申請し、約17%が不支給とされた。一方、前年度は約14万2千人を審査し、不支給は9%の約1万3千人だった。割合は20年度以降、ほぼ横ばいが続いていたが、前年度の約2倍に増えている。
 センター職員によると、人事異動で就任したセンター長が書類の要件を厳格化。センター長の方針を受け、職員が判定医に低い等級や「等級非該当」と提案するケースが増えたという。
 社会保障費の増加が見込まれる中、障害年金の受給者と支給総額は年々増えている。こうした状況が厳格化に影響しているとの指摘もある。だからといって障害者の実態を把握せず、組織ぐるみで支給の抑制を誘導していたとしたら、見過ごすことはできない。
 そもそも現在の判定の仕組みには問題がある。恣意(しい)的な要素が入り込む懸念がある点だ。
 身体障害が数値などで判定しやすいのに対し、精神・発達・知的障害の場合は生活の困難さで評価する。判定基準はあるが、機構の職員や判定医の主観によるところも大きい。しかも、判定医は名前も専門分野も経験年数も非公開である。
 障害年金を巡っては、過去にも判定の公正さが疑問視されたことがある。判定の仕組みを根本から見直す必要があるのではないか。
 高齢者の要介護度や、障害福祉サービスを受ける際の支援区分は、調査員が本人宅を訪れ、家族や支援者らにも聞き取りを行い、医師や福祉職らの合議で判定する。障害年金の場合も同様に第三者の目を入れ、より丁寧で透明性の高い仕組みに改善することが求められる。
 国は実態把握に向けた抽出調査を機構などに指示した。国民の不信感は高まっている。調査と説明を尽くしてもらいたい。

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