2025年 12月21日(日)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法
読者紹介バナーPC

2024.11.13 05:00

【フリーランス法】働き手守る環境整備急げ

SHARE

 どんな働き方でも安心して働ける環境づくりが急がれる。
 組織に属さず個人で仕事を請け負うフリーランスの人を保護する新法が今月施行された。
 フリーランスはIT技術者や食事宅配サービスの配達員など幅広い分野で広がり、2020年の調査によると、国内に約460万人いると推計される。時間や能力を有効活用できる一方、発注者より立場が弱いことによる不公正な取引を強いられる事例が問題視されている。
 典型的な事例が、きのう公正取引委員会が対応した出版大手「KADOKAWA」(東京)などの行為だ。雑誌製作で記事作成業務などを委託したライターやカメラマンへの支払いを一方的に引き下げたとして公取委が下請法違反を認定。再発防止を勧告した。
 公取委によると、KADOKAWA側は委託した26事業者に対し、代金を事前協議せず一方的に引き下げる通告を行った。引き下げ幅は最大約40%で、引き下げ分の総額は約590万円だった。ライターらの多くはフリーランスで、仕事を受ける立場上、契約の打ち切りや関係悪化などを恐れて不当な取引でも応じざるを得なかったとみられる。
 こうした不当な行為はこれまでは下請法で監視されていたが、同法は資本金1千万円を超える発注元を対象としていた。新法では、実際の契約で多数を占める資本金1千万円以下の発注元も適用対象にするとともに、フリーランス保護の観点から新しい義務も課す。
 法律の柱の一つは「取引の適正化」だ。発注元が業務内容や報酬額などの取引条件を書面やメールで明示し、業務完了から60日以内に報酬を支払うことを義務付ける。報酬の不当な引き下げや成果物の受領拒否も禁じている。
 もう一つは「就業環境の整備」で、発注者は、育児や介護などの事情を抱えるフリーランスの申し出に配慮しなければいけなくなった。また、セクハラやパワハラ行為の相談体制の整備も義務化された。
 発注側には適正な取引を行う責任があるのは言うまでもない。着実に対応しなければならない。
 課題は新法の認知度が高まっていないことだ。公取委などの調査では、新法の内容を知らないフリーランスは7割超、発注側の企業も5割超に上った。建設や医療・福祉分野で特に低かった。
 政府は経済団体や労働団体などと連携し、周知徹底を進めなければならない。実効性を高めるためにチェックに力を入れる必要もある。
 新法施行はフリーランス保護強化に向けた一歩になるが、企業に雇用される労働者と比べ、権利の保護は十分とは言い難い。労働法令の保護対象からは基本的に外れ、雇用保険は適用されず、労働時間の規制もない。労災保険は特別加入できるようになったが保険料は自己負担だ。
 時代とともに雇用形態や働き方は多様化している。働き手の実態に沿った安全網の充実が求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月