2024.10.22 05:00
【2024衆院選 原発】再び推進してよいのか

東日本大震災をきっかけにした東京電力福島第1原発事故は、それまでの原発政策に多くの教訓と反省をもたらした。原発依存からの脱却が望まれた。
事故から来春で14年。政府はいま再び、原発を推進している。再稼働だけでなく新増設も目指す。本当にこのまま突き進んでよいのだろうか。衆院選は大切な論議と判断の機会になる。
事故後の12年、当時の民主党政権は事故を教訓に「革新的エネルギー・環境戦略」を策定した。再生可能エネルギーの拡充や「30年代の原発稼働ゼロ」を掲げた。政策の大転換だった。
ところが自民党が政権に復帰すると、原発回帰へと向かい始める。14年改定のエネルギー基本計画は原発依存度を「可能な限り低減する」と明記。同時に原発は「重要なベースロード電源」とも位置付けた。
その後の改定でも、依存の可能な限りの低減方針は維持しつつ、30年度の原子力の電源構成比率目標を「20~22%」に設定。原発回帰が鮮明になった。
それを回帰どころか「推進」にまで変えたのは岸田文雄前政権だった。22年、エネルギーの安定供給と脱炭素実現のため「原発の最大限の活用」を打ち出す。
事故後に導入された原発運転の「原則40年、最長60年」の規定も見直し、60年超の運転を可能にした。廃炉が決まった原発の敷地内での次世代型原発への建て替え方針も閣議決定した。
石破茂首相は、先の自民党総裁選では「原発をゼロに近づけていく努力は最大限する」と主張していたが、首相就任後はトーンダウン。原発の利活用を明言している。
一方で野党は推進と反対で分かれる。最大野党の立憲民主党は党綱領で「原発ゼロ」を掲げている。
ただ立民は、衆院選の公約では新増設や、避難計画の策定と合意がない再稼働を認めない姿勢を維持する一方、原発ゼロには触れていない。電力安定供給のための再稼働と、中長期的な原発に依存しない社会実現を分ける戦略のようだ。
しかし、日本では巨大な地震がいつ、どこで起きてもおかしくない状況にある。本当に原発は安全なのか、根本的な疑問が拭えない。
事故発生時の備えにも不安が募る。1月の能登半島地震では、北陸電力が再稼働を目指す志賀原発で、事故時に利用する住民避難路の大半が寸断。避難計画の実効性に疑問符が付いた。
政治や電力会社に原発の再稼働や推進を安心して委ねられる状況にはない。国民不在の政策にならぬよう十分な論議が求められる。



















