2024.09.15 05:00
【デブリ採取着手】廃炉へ知見を集積せよ

東京電力は福島第1原発2号機で溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しを進めている。3グラム以下を採取する計画で、採取装置の先端が原子炉格納容器内部に入ったようだ。
2011年3月の事故後初めての取り出しとなる。廃炉工程表は3段階に分かれ、政府と東電は今回の着手で第2期が終わり、最終段階の「第3期」に移行したとする。
取り出しは当初、21年に開始する予定だったが、工法の変更などで計画から3年遅れた。慎重に手続きを進める必要性は言うまでもないが、作業に困難が伴うことを示しているのもまた間違いない。
それほど丁寧な対処が求められるにもかかわらず、8月の着手直前にミスで準備作業が中断した。回収装置を押し込むパイプの取り付け順を間違えるというお粗末な行為が原因だった。事前作業の段階で起き、点検でも気づかなかったという。
デブリは極めて高い放射線を出すため、厳しい環境下での作業を迫られる。重装備が必要な厳しい現場は「多重下請け構造」となり、下請け任せにした甘い管理体制が重大な事態を招きかねないミスを誘ったと分析された。
責任感や緊張感の欠如が露呈した格好だ。第1原発ではトラブルが続き、ずさんな作業実態が相次ぎ発覚している。地元からの不安の声が上がるのは当然だ。管理体制の徹底した見直しと安全意識の向上が繰り返し迫られた。
今回は東電社員が作業状況を確認するなどの再発防止策をまとめ、作業が再開された。厳しく反省して、安全性への意識を繰り返し確認する必要がある。
計画では、原子炉格納容器の貫通部から最長22メートルに伸びるパイプ式装置を差し込む。先端の爪形の器具で格納容器底部にあるデブリをつかんで回収する。開始から回収終了まで2週間程度を見込む。
取り出しに着手したものの課題は多い。技術的にも未知の作業であり、本格的な取り出し工法は定まっていない。デブリの保管場所も決まっていない。
デブリは第1原発1~3号機に残り、総量は880トンに上ると推計される。採取した少量から性質の分析や工法選定につなげ、処分方法の検討に反映させるとする。廃炉は41~51年に完了する計画だが、取り出しが進まなければ実現は遠のく。
デブリが存在すれば汚染水の発生も止められない。浄化した処理水の海洋放出も続くことになる。科学的根拠に基づかない主張が地域経済を苦しめる。被害を拡大させない対策も求められる。
信頼が揺らぐ中で廃炉の最重要工程に入った。廃炉完了目標の達成は見通せないが、着実に進めるしかない。慢心は禁物だ。



















