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2024.09.01 05:00

小社会 自由と創刊120年

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 家路を急いでいた本紙の先達は高知市の大橋通まで来て、げたの鼻緒がプツリと切れたそうだ。戦時下の秋のこと。途端に翌日の新聞に「大詔」を組み忘れたと思い出し、会社に引き返した。

 太平洋戦争中は、毎月8日が大詔奉戴日だった。国民の戦意高揚を図るため、開戦の詔書の掲載が義務づけられていた。〈もし掲載を忘れようものなら編集局長はもとより社の代表者まで非国民のレッテルを張られる〉

 夜10時ごろには、印刷前の紙面を特高警察の官舎へ持っていく。検閲を受けるためだった。いずれも「高知新聞100年史」から。言論統制に屈し、新聞などメディアが戦争に加担した「痛恨」の時代の一断面を思う。

 いまのメディア周辺はどうなのだろう。ノーベル賞委員会は3年前、「表現の自由はいまや絶滅危惧種」との見方を示した。ロシアや香港の言論統制。権力者が自らに不都合な報道を抑圧する風潮でいえば、「フェイクニュース」と連発していた米国の前大統領も同じ類いか。

 日本も無関係ではない。「けしからん番組は取り締まるスタンスを」。放送法を巡って、近年の政権中枢の発言が報じられたのは昨春のこと。おかしな兆しには警戒を怠れない。

 作家の半藤一利さんは晩年、「昭和史をだめにしたのは言論の自由を失ったこと。国民がものを言わなくなった時、国家は何をしでかすか分からない」。肝に銘じたい。本紙はきょうで創刊120年。

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