2024.07.14 05:00
【NATO宣言】不可逆の道に増す険しさ

NATO首脳会議は、ウクライナが加盟への「不可逆的な道」を歩むことを支援すると宣言に盛り込んだ。しかし、加盟の具体的な道筋は示さなかった。
NATOは創設75年となる。ソ連に対抗する軍事同盟は、冷戦崩壊で東欧諸国の加盟が相次いだ。テロ対策の側面を強めたが、ロシアのウクライナ侵攻で対ロ集団防衛に回帰し、北欧にも加盟が広がった。
ウクライナのゼレンスキー政権は、ロシアの侵略を将来にわたり抑止するには集団防衛義務を規定するNATO加盟が不可欠との立場をとる。早期の交渉開始を求めるが、戦時中の加盟はNATOが戦争に巻き込まれる危険があり、慎重論は根強い。ロシア寄りの国もある。
宣言は加盟へ一歩踏み込んだが、早期実現は見通せない。「現時点での一致点」とする見解が、一枚岩になれない加盟国の姿勢と先行きの厳しさを物語っている。
さらに、侵攻が長期化する中、加盟国間には支援継続への異論がくすぶるようになった。ストルテンベルグNATO事務総長は、NATOにとってロシアがウクライナで勝利することが最大のリスクだと、継続の必要性を指摘した。
バイデン米大統領はウクライナに対して全面支援を約束し、防空システムの追加供与などを表明した。加盟国は来年も大規模な軍事支援を続ける意思を示し、支援縮小への不安排除に努めた。
だが、不安は米国とNATOとの関係にも広がる。バイデン氏は「NATOが米国をより安全にしている」と述べ、連携継続を強調した。
背景には、11月の米大統領選に絡む欧州側の危機感の高まりがある。NATOに冷淡なトランプ前大統領が返り咲く可能性に起因する。トランプ氏は米国が過度な負担を強いられていると主張し、外交姿勢は内向きになることが想定される。加盟国はトランプ氏が勝利する事態に備えた動きを見せる。
米国主導のウクライナ支援も転換しかねない。米議会ではトランプ氏の影響下にある共和党の反対で支援の緊急予算成立が大幅に遅れ、ロシアの進撃につながった。
首脳会議では、ウクライナが将来にわたりロシアに対抗できるよう、軍事訓練や装備購入、防衛産業への投資など長期的な安全保障支援の実施でも一致した。選挙結果の影響を受けない支援体制づくりが模索されている。
宣言は、中国をロシア侵攻の決定的な支援者だと強く非難した。インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化を打ち出した。中国は反発している。防衛強化が緊張を高めないよう、圧力とともに対話の重要性も増している。



















