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2024.07.13 05:00

小社会 置き配の時代

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 夏目漱石の小説「それから」にこんなくだりがある。「牛乳配達が空罎(あきびん)を鳴らして急ぎ足に出て行った」。若い頃に読んで、牛乳の宅配は明治時代からあったのか、と驚いた記憶がある。

 当時の詳細は分からないが、昔から牛乳配達といえば、手渡しより「置き配」が主だった。朝、瓶入り牛乳を門や玄関前に置いていってくれた。そう考えると、置き配は一定なじみのあるサービスではある。

 宅配便の再配達削減へ、置き配が急速に広がっている。先日も佐川急便が、ヤマト運輸や日本郵便に続いて本格導入すると発表した。通販の拡大で、国内の宅配便取扱個数は過去37年で10倍超に増えている。配達員の長時間労働解消や二酸化炭素の排出削減を考えれば、自然な流れだろう。

 しかも運ぶ側の都合だけではない。共働きが一般的になり、日中は留守の家が増えた。以前、配達員をしていた知人によると、一昔前なら不在の時はお隣に預かってもらったが、近年は近所付き合いも希薄になり、「置き配が好まれる」という。

 ただ、顔の見えないサービスがこう増えると不安も覚える。銀行ではATMが相手で、スーパーやコンビニではセルフレジ。猛暑や大雨の中、荷物を届けてくれるドライバーさんに「ありがとう」の一言も不要な社会になるのだろうか。

 それもこれも含め世相を反映した置き配の時代。漱石に人間味のない世の中だと言われなければよいが。

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