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2024.07.03 08:00

【日銀短観】円安が消費にのしかかる

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 歴史的な円安は輸出企業の業績を押し上げる一方で、物価高が個人消費を鈍らせる。影響は二極化している。足踏み状態にあるとされる日本経済は厳しい局面を迎えた。
 日銀の6月企業短期経済観測調査(短観)で、景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業が前回3月調査から小幅改善した。堅調な海外経済を背景に、円安と値上げの効果が反映された。
 大企業非製造業は高水準を維持したが、4年ぶりに小幅悪化した。小売業の悪化が目立つ。輸入原材料費の増加が販売価格に転嫁され、消費者は買い控えしている。輸送費や人件費の高まりも影響した。
 国内消費の回復が重要となるが、物価の上昇に節約志向は根強いようだ。1~3月期の国内総生産(GDP)は2四半期ぶりのマイナス成長となり、個人消費は4四半期連続の減少だった。
 4~6月期は自動車生産の回復でプラス成長に戻ると予測される。だが、個人消費が力強さを取り戻す要因は乏しい。
 実質賃金はマイナスが2年以上続いている。今春闘は大企業を中心に賃上げの動きが目立ったものの、中小企業では限定的な実施にとどまった。恩恵が行き届いて実質賃金のプラス転換が期待されるが、賃上げの広がりや持続は判然とせず、先行きには不透明感が漂う。
 日銀はマイナス金利政策の解除に踏み切り、大規模な金融緩和策から正常化を図る。国債購入の減額方針も決めた。しかし、迫力不足と見た市場は日米の金利差を意識した円売りドル買いを続け、1ドル=161円台の円安水準を付けた。東京株式市場はきのう、輸出関連株を中心に買われて日経平均株価は約3カ月ぶりに4万円台を回復した。
 円安の進行は企業の海外収益を拡大し、国の税収を増やす側面がある。2023年度は4年連続で過去最高を更新する見通しだ。もっとも、物価高が消費税収を膨らませたことも一因であることは見逃せない。国民生活は厳しくなる。
 24年度も上振れする可能性が指摘され、それらの使途が議論されそうだ。還元策を巡っては、6月に始まった所得税と住民税の定額減税を岸田文雄首相が打ち出した際、過去の税収増分は既に使っていたことが後日判明したことがあった。
 防衛増税方針など、首相の増税イメージは強い。定額減税はそれを払拭して政権浮揚を図る思惑だったようだ。唐突感が拭えない今般の電気・ガス料金への補助も同じだろう。今後の財政運営への懸念が強まれば、かえって将来の増税を意識させ消費を低迷させかねない。
 日銀は7月末の金融政策決定会合で、政策金利の引き上げがあり得るとする。利上げは、国債の利払い費が増額する懸念も伴う。金融政策だけで円安水準を転換できるわけではないが、負の側面の排除に取り組まなければならない。市場との対話を重ねながら有効な対策を行う必要がある。

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