2023.07.20 08:20
【全文公開】釣り針は痛いかね? 悩ましい魚の気持ち 松岡浩司―魚信 はっぴぃ魚ッチ
当店のカウンター越しに、魚釣りを全く知らない女性のお客さまから問われました。
「…」
これは釣り人にとって、なかなか辛辣(しんらつ)なご質問であります。私たち釣り人は、よく魚の立場で物事を考えます。

ルアーのトレブルフックをくわえ込んだエソ。この表情の真意は?
それは釣果を上げるため。どこにいるのか、食い気はあるのか、どんな餌に食いつくのか…。魚の立場に立つのです。
ところが、抵抗の末に釣り上げられた魚の気持ちはどうでしょう。身体に針傷を残されてリリースされた魚の気持ちは?
もう釣られた側の立場を気にし始めると、魚釣り自体が楽しめなくなるという甚だ人間本意なワガママレジャーなのです。
もしかすると釣り人には「釣られた魚の気持ちは考えない」といった不文律が成立しているのかもしれません。
そこで私は考えました。
「魚には痛覚がないのではないか?」
根拠はこうです。
小学生の頃、授業中の私語がうるさい私は先生にモミアゲをつまみ上げられ、「コラ松岡、静かにしろ!」。
「痛ててて~、先生ゴメンなさーい!」
モミアゲ攻撃の激痛に、精いっぱいの爪先立ちで耐えました。
では、もし口に釣り針が刺さった魚に人と同じ痛覚があるとすれば「痛ててて~」と釣り人側に泳いでくるのではないか?
しかし魚は必ず釣り人と反対方向に逃げ、跳ねたり暴れたりと抵抗します。これは痛みを激化させる行為です。そしてこの「引き」こそが、何より釣り人を魅了する魚釣りの醍醐味(だいごみ)なのです。

魚を掛ける針は形もサイズもいろいろ
正直、ほっとしました。もし魚が痛みで苦しんでいると結論づけられると、魚釣りはおろか魚の活(い)け造りや躍り食いといった、日本の食文化にも影響が出ると懸念されます。
では、今の私が魚のためにできることとは…。
無益な殺生を無くし、魚種に優劣をつけず、釣りのできる環境に感謝の気持ちを持つ。
胸襟秀麗(きょうきんしゅうれい)な太公望への道は、まだまだ「果てしなく遠い」のであります。(BAR「深夜プラス1」店主=高知市帯屋町
高知市帯屋町のバー「深夜プラス1」のマスター、松岡浩司さんのエッセーから、魚信編集部がお気に入りの作品をチョイス。カウンター越しの釣り談義と、ちょっとマニアな釣行が交錯する「いい話」を、バーボン片手にお楽しみください。






















