2024.03.30 08:26
恋愛で胸に痛み、なぜ 正体は心筋症の一種 医師「負担大 気持ち整理を」【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】
「心臓がギュッとなるこの感じ、恋の病でしょうか」。鹿児島市の鹿児島医療福祉専門学校1年の男性(19)は通学時のバスで頻繁に乗り合わせる女性に思いを寄せている。「まだ名前も知らなくて。今日こそ声かけようと思うのにいつも勇気が出ず、胸が痛くなる」と顔を赤らめる。
同じ専門学校に通う友人の男性(26)も「勇気を出して告白したら、『付き合っている人がいる』と振られ、過去最大級に胸がズキンとした」。「胸が痛い」という慣用句があるが、本当に胸に痛みが走ったという。
心臓血管外科医で慶応義塾大学の川田志明名誉教授(87)は「胸の痛みは文学的な表現にとどまらず、強い精神的ストレスの後に『たこつぼ心筋症』が発症し実際に痛みを感じていることがある」と指摘する。
たこつぼ心筋症とは、強い精神的ストレスの後に胸の痛みや動悸(どうき)が生じる心筋症の一種。血液を全身に送り出す左心室に異常が起き、その時の形がたこつぼに似ていることから日本で名付けられたという。詳しい原因は不明だが、強い精神的ストレスから体を守るため、血圧や心拍数を上げる神経伝達物質やアドレナリンが血液中に大量に分泌され、軽い心臓発作のような症状が出ることが一因に挙げられている。
数週間から数カ月程度で自然治癒するものの、基礎疾患や合併症と関連した死亡例もあるという。川田名誉教授は「専門医が少なく表面化しにくいが、恋愛以外でもペットロスや大規模災害など長引く心的ストレスに見舞われた人は陥りやすい身近な病」と説明。東日本大震災で症例が確認されており、能登半島地震でも注目している。
感受性やストレス耐性は人それぞれ。今のところ予防策や特別な治療法はなく、「度が過ぎる行動や思いは体への負担が大きい。発症したらしっかり休養を取り、身近な人と会話を重ねながら気持ちを整理して自分をねぎらって」と話した。(南日本新聞)
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