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2024.03.30 08:26

街のごみ箱 撤去進む 収集に時間、環境も悪化 観光地では再設置の動きも【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

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撤去前のごみ箱。日1回の収集では追いつかず、ごみがあふれていた(広島市提供)

撤去前のごみ箱。日1回の収集では追いつかず、ごみがあふれていた(広島市提供)

 「原爆ドームそばにあったごみ箱がなくなった。困ってます」。広島県安芸太田町の大学3年女性(21)から、そんな声が寄せられた。平和記念公園(広島市中区)のベンチで普段通りおにぎりを食べ、包みを捨てようとして気付いたという。街中のごみ箱は「置けば環境悪化を招く」として減っている。一方で取材を進めると、観光地を中心に今、その必要性が改めて注目されていた。

 まず平和記念公園を管理する市緑政課に尋ねた。先進7カ国首脳会議(G7サミット)直前の昨年5月15日、園内のごみ箱16基のうちドーム近くの3基を撤去し、今もそのままという。

 通りに近いこの3基は公園の利用者以外も大勢が使う。日1回の収集では間に合わず、家庭ごみの持ち込みといったマナー違反もあった。小林一申課長は「ドームの景観が損なわれ、放火の危険も想定される。見過ごせない」と強調する。

 ごみが持ち込まれ、かえって衛生環境が悪くなる―。街中のごみ箱はこうした理由で消えている。取材の結果を女性に伝えると「とはいえ、困る場面って多いですよね」とため息をついた。

 外国人観光客も戸惑っているようだ。観光庁の2019年調査では、日本旅行中の困り事は「ごみ箱の少なさ」(23・4%)がトップ。言葉の問題などを抑えている。

 こうした声を受け、各観光地ではごみ箱を再び置く動きも出ている。例えば食べ歩きが人気の大阪・道頓堀。ぽい捨てで汚れる街をどうにかしようと地元商店会や旅行会社が連携し、昨年11月に10カ所置いた。

 収集など管理の手間を減らすため、設置したのがスマートごみ箱「SmaGO(スマゴ)」だ。ごみを自動で圧縮でき、リモートで蓄積状況も分かる。商店会事務局は「『ごみ箱はなくしてきたのに』と驚く声もあったが、観光リピーターを生むには必要」と力を込める。観光客が消えた新型コロナウイルス禍を経て、まちづくりへの思いが強まったという。

 身近なところでも模索が始まっていた。広島県の観光地、宮島(廿日市市)。ごみは持ち帰りを促している。ただ来島者がコロナ禍前の水準に戻り、テイクアウトの店も増えている。市の清水俊文・宮島まちづくり推進担当課長は「おもてなしの観点からいま一歩、対策を進めたい」。適切な管理下での設置の是非を住民や事業者、観光関係者と話し合うという。

 街中のごみ箱のありようは時代と共に移り変わってきた。広島市は1994年の広島アジア大会を機に、街路に相次ぎ設置。97年には400カ所(当時は灰皿付き)に上ったが、2012年度に美化推進のため減らす方針に転換し、今は8カ所しかない。

 実はそのうち2カ所は道頓堀と同じスマゴ。ごみがあふれにくくなる効果があり、市は「順次切り替えたい」としつつ、増設は予定していない。再び転換期にあるかもしれない街中のごみ箱。10年後はどんな存在になっているだろう。(中国新聞)

▼高知では
キャンプ場など例外も
 高知県も、環境対策として公園にごみ箱を置かない方針は定着している。

 県公園下水道課によると、県が管理する都市公園は五台山公園(高知市)や鏡野公園(香美市)など現在11カ所。このうち、ごみ箱が設置されているのは、のいち動物公園(香南市)と土佐西南大規模公園(四万十市、黒潮町)のみで、飲食の販売やキャンプ場があるためだという。

 他の公園にも以前はごみ箱があったとみられるが、撤去された詳しい経緯は不明。県歴史文化財課によると、高知城を含む高知公園は、花見客らのごみであふれかえることから2008年ごろに撤去したという。

 高知市が管理している公園は約700。こちらも以前はごみ箱を設置していたが、家庭ごみの持ち込みなど「ごみがごみを呼ぶ状況」を受け、10年ほど前から撤去を進めた。唯一、帯屋町公園(同市帯屋町2丁目)には20年春までごみ箱が残っていたが、やはり不法投棄が続いたため撤去に至った。

 県、高知市の担当者はともに、「各自がごみを持ち帰るのが基本」。今後も設置する考えはなく、観光客の利便性といった観点からの設置議論も今のところないという。(山崎彩加)


 県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。

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