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2024.05.20 05:00

【介護保険制度】持続性高める議論を

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 3年ごとに見直される介護保険料で、65歳以上の人が2024~26年度に支払う月額保険料は全国平均で6225円となり、過去最高額となった。制度が始まった00年度の2・1倍に当たる。
 高齢化が進めば必要な介護サービス量や費用が増えるのは避け難い。この20年余りで介護サービス利用者は3・5倍となり、介護費用は約3兆6千億円から23年度は約13兆8千億円と4倍近くに膨らんだ。
 介護業界の担い手不足が深刻化する中、従事者の処遇改善も求められている。賃上げに必要な財源確保も保険料上昇につながったが、これは必要な費用だといえるだろう。
 しかし、際限なく保険料が上がり続ける構図に被保険者の悲鳴が上がり、現行制度の限界もにじむ。保険料は今後も上がり、高齢者数のピークとされる40年度には、65歳以上で平均月額9千円を超えるとの試算もある。保険の運営者である市町村ごとに保険財政の実情は異なるが、将来の逼迫(ひっぱく)を懸念する市町村は少なくない。
 介護保険制度の持続可能性を高めるための見直しが必要な状況であることは間違いない。
 見直しの主なポイントの一つが、一定の所得があるサービス利用者の自己負担割合になる。現在は「1割負担」が9割以上を占める中、2割負担の対象となる所得水準の引き下げは、これまでも議論されてきた。サービス面では、要介護1、2の人への生活援助サービスの見直しや、ケアプラン作成の有料化などが検討項目に挙がる。
 ただ、いずれも被保険者の生活に影響し、サービスの利用控えなどを招く可能性もある。被保険者の生活実態や負担能力を見極め、きめ細かく対応することが欠かせない。「社会全体で介護を支える」とする理念が揺らいでは、制度の存在意義にも関わってくる。
 一方で、抜本対策なしでは保険財政の厳しさを改善することはできないともされ、公費負担の拡充のほか、現在は40歳に設定されている保険料納付開始年齢の引き下げも検討課題に挙がる。
 制度改革の議論は、幅広い世代の理解が欠かせない。国民を巻き込んで丁寧に進める必要がある。
 2024~26年度の保険料が下がった自治体のうち、介護予防の取り組み強化が奏功しているとした事例は少なくなかった。地道ながら介護費用を抑える最も効果的な方法であり、こうした取り組みを広げていく余地はまだあるはずだ。
 高知県内では、24~26年度の65歳以上の平均月額保険料は5809円で、5円下がった。基金を取り崩して保険料上昇を抑えられたが、24年度以降の給付費自体は増え、楽観はできない。引き続き介護予防施策などが重要になってくる。
 県内では、中山間地域を中心に担い手の高齢化や減少が進み、保険料を払っている人がサービスを受けられない懸念も生じている。担い手対策も力を注いでいく必要がある。

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