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2024.05.19 05:00

【入試SNS流出】いたちごっこに歯止めを

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 2月に行われた早稲田大の一般入試の試験問題が、試験時間中に外部に流出していた。
 男子受験生が眼鏡型端末「スマートグラス」で撮影し、交流サイト(SNS)で外部に画像を送って解答を求めたとみられる。警視庁は、男子受験生を偽計業務妨害の疑いで書類送検した。
 電子機器を悪用した入試の不正は後を絶たない。どのような再発防止策が可能なのか。国や大学は現実的な対策を議論する必要がある。
 男子受験生は2月16日、創造理工学部の試験を受験中、撮影や通信機能があるスマートグラスで問題用紙を撮影し、画像をズボンのポケットに隠したスマートフォンに転送した上で、スマホを操作してX(旧ツイッター)を通じて外部に流出させた。答えを送ってくれた人には謝礼を支払っていたとされる。
 解答を送った1人が不正に気付き、早大に連絡して試験問題の流出が発覚した。男子受験生は他学部の試験にもスマートグラスを持ち込んだが、大学関係者が気付いた。両学部とも試験結果は無効となった。
 電子機器による入試の不正は、近年相次いでいる。
 2011年、京都大の受験生が携帯電話から質問サイトに問題文を投稿し、京都府警に逮捕された。
 22年の大学入学共通テストでは、袖に隠したスマホで撮影した問題を外部に送信し、解答をイヤホンで聞いていた女性が書類送検された。
 事件を受け、文部科学省は22年、共通テストでの防止策をまとめた。一斉にスマホの電源を切り、かばんにしまうよう試験監督が呼びかけることや、大学に巡視マニュアルを配布することなどを打ち出した。 
 しかし機器の小型化が進み、身に着けられる端末も普及する中で、抜本的な対策をとることは難しい。「いたちごっこ」が続いている。
 同様の不正は海外でも起きている。中国や韓国では、通信機器を使えなくする電波遮断装置や金属探知機を導入しているケースもあるという。文科省も装置の導入を検討したが、会場数が多く、費用面から見送っている。
 質問への答えを自力で生み出す生成人工知能(AI)も新たな懸念材料だ。これまでのように外部の協力者を必要とせず、受験生が手元の端末だけで解答を入手できるとの指摘がある。
 結局、目元や耳を注意して見るといった、試験官による巡回に頼らざるを得ないのだろう。だが、頻繁すぎると受験生の集中力をそぐ恐れもある。
 電子機器の急速な進化で、今後も想像を超える不正が起きる可能性がある。当事者の声や費用面も考慮しながら、防止策を改めて検討することが求められる。
 もちろん、最終的に問われるのは受験生一人一人の良心だ。大多数の受験生は真剣に試験に臨んでいる。カンニングや問題流出は、入試で最も大切な公正、公平への信頼を損なうことを強く認識してもらいたい。

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