2024年 05月19日(日)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2024.05.06 05:00

【空き家対策】所有者の責任も問われる

SHARE

 空き家問題が深刻さを増している。5年に1度行われる総務省の調査によると、売却や賃貸など使用目的のない空き家は2023年10月時点で385万戸に上り、5年前より37万戸増えた。
 適正に管理されていない空き家は地震時に倒壊し、避難ルートを含めて道路をふさぐ恐れがある。1月にあった能登半島地震の被災地では実際、倒壊家屋が道路をふさいで復旧作業の足かせになっている。
 台風時にも屋根が飛ぶなどの危険をもたらす。平時も、空き家が「ごみ屋敷」化すれば景観や衛生面で周囲に迷惑をかけかねない。
 増える背景には高齢化や人口減少があり、手を打たなければ30年には470万戸に増えるとの予想もある。国、地方そろって対策を加速させる必要がある。
 対応を強化するため、政府は昨年12月、改正空き家対策特別措置法を施行した。建物がある土地には固定資産税の減免措置があるが、倒壊の危険性が高い「特定空き家」に指定された物件は対象外としている。新法では、「特定空き家」の予備軍ともいえる老朽物件を「管理不全空き家」に指定。市町村による修繕や建て替えの指導に従わない場合は、税優遇の対象外とした。
 また改正不動産登記法に基づき、所有者不明の空き家を減らすため、4月から不動産相続登記が義務化された。正当な理由なく怠れば過料が科される。
 ともに、物件所有者の利害に直結する施策であり、空き家対策に本腰を入れた格好だ。問題の経過を踏まえれば後手に回った面もないとは言えないが、実効性のある運用で空き家の解消につなげていきたい。
 人口減少が先行する高知県の空き家問題は、より深刻だ。23年度調査では、使用目的のない空き家は5万100戸で5年前と同数だが、住宅総数に占める割合は12・9%で、都道府県別で2番目に高かった。
 空き家は移住の受け皿にもなる。しかし、県内で年間約2千戸ずつ出現しているにもかかわらず、貸家として使える物件は少ない。住宅を見つけられずに移住を諦めるケースが年約200件あるともされ、その観点からも対策は重要になる。
 県内の空き家対策は、10年ほど前から講じられてきた。県は、住宅解体や貸家用に改修する場合の補助制度を設け、市町村も借りたい人と空き物件をつなぐ「空き家バンク」事業などを進めてきた。
 県は22年度から抜本強化し、物件の掘り起こしや所有者への働きかけ、相談対応、借りたい人とのマッチングなど各分野で体制やメニューを拡充させた。24年度には、市町村の独自の取り組みを支援する人口減少対策総合交付金も設けた。成果が求められる。
 空き家が社会的問題になっている以上、所有者の責任も問われる。家は使わない期間が短いほど改修費は安く済み、次の活用策の選択肢も広がる。所有物件の相続や将来を考える機会を増やしていきたい。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月