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2024.04.25 08:24

地空 「あけぼの」に学ぶ 学芸部・竹内一

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 本紙くらし面「あけぼの」に寄せられる投稿は70代、80代、90代の女性が主力であり、40~60代女性はヤングと言えよう。残念ながら男性からの投稿は数少ない。ほとんどは原稿用紙にしたためられた手書きである。その肉筆によって、時空を超えた喜怒哀楽がつづられる。生きている今と忘れがたい過去の記憶が交錯する。

 とりわけ春という季節の記憶は、それが喜びであれ悲しみであれ、私たちの心に鮮明に刻まれていく。そうした春を70、80、90回と過ごしてきた人たちである。それぞれの人生のエピソードに滋味がある。

 4月15日に掲載した「二つの名前を持った猫」も面白かった。かわいい子猫をもらった。帰省していた大学生の息子は「亀吉」と名付けたが、筆者は呼びやすい「ミーコ」とした。猫は二つの名前を受け入れた。

 ところが近くに住んでいる家主さんの名前も「亀」だった。猫を捜している息子が窓を開けて「亀、亀よ亀よ」と大声で呼ぶと、その家主さんが「誰か用事かねえ、家におるよ入ってきて」と答えるというのだ。

 春休みで息子が帰省していた時に「亀吉」は亡くなった。母子は涙を流しながら弔った。それから春は何度もやって来て、令和2年に息子も先立ってしまった。母である90歳の筆者は〈今ごろはもしかして「亀吉」と冥土で昔のような仲になっているかもしれない〉とつづる。

 長く生きるということは、それだけ悲しみを重ねることでもある。筆者はユーモアで悲嘆を包み込みながら、いとおしい思い出を回想する。今日をよりよく生きるしかないな。「あけぼの」から教えられている。

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