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2024.04.19 08:00

小社会 震度以上の「揺れ」

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 土佐民話継承の第一人者で、昨年亡くなった市原麟一郎さんは、昭和南海地震の体験談も精力的に収集している。総勢108人から聞いた記録を1981年、「裂けた大地」の題名で出版した。

 その中のいくつかは揺れに動揺する様子を詳細に描く。「大丈夫だと高をくくっていたが(中略)だんだん強くなって、こりゃあいかんと…」。楽観から焦り、混乱へ。個々の生々しい話こそが統計以上の教訓になる。

 おととい夜の豊後水道を震源とする地震。最大震度6弱だった県西部はもちろん、それ以外の地域でも観測震度以上に動揺した人が多かったのではないか。

 なにせ高知には、南海トラフというリスクがある。人は過酷な状況に陥った時だけでなく、そうなる恐れを感じた時のストレスも大きいものだ。筆者の場合は「ミシミシ」と家がきしむ中、今にも大きな揺れが来そうで気が気でなかった。

 思えば高知は、長く大きな揺れに遭っていなかった。四国で6弱を観測したのは現在の震度階級になった96年以来初めてという。いかに「わが事」として捉えられるかが重要な防災活動にあって、これはありがたいけれど悩ましい現実でもある。この地震で県民意識はどう変わるだろう。

 「地震や津波の証言も現代の民話なんです」。市原さんが体験談集めに動いたのも、自らが昭和南海を経験した危機感からだった。ミシミシというあの不快な音を、教訓として心に刻む。

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