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2024.04.18 05:00

小社会 宗田さんの嘆き

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 訃報が伝わった小説家の宗田理さんの代表作といえば、1985年の「ぼくらの七日間戦争」だろう。中学生たちが廃工場に立てこもり、理不尽な大人たちをぎゃふんと言わせる物語。宮沢りえさん主演で映画化もされた。
 宗田さんはこれを皮切りに、同じ主人公らが奮闘する「ぼくらの」シリーズを次々に刊行する。どれも読みやすく、子どもたちへの愛情にあふれているからだろう。いまも支持され続けている。
 中でも作者の強い思いが感じられるのが、「ぼくらの太平洋戦争」。戦後70年を1年後に控えた2014年に書き下ろした。生徒たちが戦時中にタイムスリップし、壮絶な体験をする。
 17歳で終戦を迎えた宗田さんが、自身の体験や実話を小説に取り入れた。国に命をささげるのが当たり前の時代。これほど理不尽な世はあるまい。生徒たちは食糧難に耐えながら学徒勤労動員で旧海軍の兵器工場で働いた。そこに大編隊の米軍機が襲いかかる。
 工場は壊滅し、10代の若い命が数多く奪われた。「どんなに生きたかったかわからないのに」。物語中の会話に作者の強い憤りがにじむ。あとがきではこう強調する。「戦争をした国における最大の被害者は、いつの時代も子どもたちである」
 いまのウクライナや中東ガザはまさにその状態にある。人間はなぜ歴史に学べないのか。作品を読み直すと、宗田さんの嘆きが聞こえてくるかのようだ。

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