モスクに集まったイスラム教徒たち。「やっと集まれる場ができた」と喜んでいる(高知市本町5丁目)
高知県内で暮らすインドネシア人夫妻らが、高知市のビルに、イスラム教を信じる人たちが祈りをささげる礼拝所「モスク」を開きました。四国では高知県だけ礼拝所がなく、県内のイスラム教徒は喜んでいます。妻は高知滞在13年の女性看護師で、共生社会の推進に向けて「高知の人にムスリム(イスラム教徒)を知ってもらうきっかけにしたい」と話しています。 モスクは戦前から東京や神戸、名古屋にあり、近年は、羽田空港や関西国際空港などにも礼拝室の設置が進んでいます。 四国3県では2021年までにそれぞれの県で暮らすムスリムがモスクを開設。高知県内ではなかなか実現せず、それぞれ自宅や公民館で礼拝を続けてきました。 今回は、高知市大谷のマユミ・セティアワティさん(31)と夫のエコ・ワーユディさん(32)が中心となって開きました。家族で滋賀県を旅行した時、「琵琶湖を一周するとモスクが2カ所あったのに高知にはない」。そんな声を交流サイト(SNS)などでもらすと、「あったらいいな」「応援します」と県内から反応があり、昨年春から動きだしました。 エコさんを代表とする「高知ムスリムファミリーインドネシア会」を設立。昨年10月から物件を探し始めました。事務所や一軒家を回っては何度も断られました。「『イスラム教は過激』という偏見があるのかも。でも、アラー(神)がいい場所を見つけてくれる」と前を向くうち、今の場所が見つかりました。 市内のインドネシア料理店に募金箱を置いてもらい、SNSで寄付を呼びかけました。50人以上から合計59万円が集まり、今年1月に契約しました。 会では、他国の人や旅行者も使えたり、アラビア語の聖典コーランを読む教室を開いたりすることも考えています。インドネシア人で高知工科大学の留学生、リスマ・プトラさん(38)は「モスクは磁石のようなもの。ここに集まれば助け合える。ムスリム観光客も安心して旅行できるから高知にとっても利益がある」と話しています。 マユミさんは「少しずつ文化を理解してもらえれば、お互いを尊重して生活できると信じています」。 ◆高知のインドネシア人 インドネシアは人口約2億8千人で、9割弱がイスラム教徒とされます。高知県内で暮らすのは2013年に200人弱でしたが、特定技能労働者や技能実習生が訪れるにつれて増え、昨年6月末時点で739人。ベトナム、中国、フィリピンに続く多さとなっています。