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2023.09.05 08:00

【辺野古敗訴】対話の重要性は高まった

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 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設は、埋め立て工事再開が視野に入る局面を迎えた。しかし、国が法的正当性をかざして強硬姿勢をとるようでは対立を加速させかねない。民意と向き合い、丁寧な対応を積み重ねることができるかが問われる。
 移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しなかった沖縄県に対する国土交通相の是正指示は適法とする判決が確定した。最高裁が県側の上告を棄却した。
 国交相は県の不承認の処分を取り消し、承認するよう是正指示を出していた。最高裁は先に、県の処分を取り消した裁決の妥当性が争われた訴訟でも県側の上告を受理しない決定をして、県側の敗訴が確定している。是正措置の違法性が争われた今回の訴訟では県側の上告を受理したが、県側敗訴が維持された。
 埋め立てを巡っては、国は地盤に問題があるとの調査報告を開始3年前の段階で受けていたことが判明している。軟弱地盤の存在を認め、大規模な地盤改良の必要があると明らかにしたのは土砂投入を始めてからだった。
 移設反対を掲げて知事選で推進派現職に圧勝した当時の翁長雄志知事は、民意を背景に移設中止を求め、政府との対立が深まった。さらに地質上の問題が伝われば移設推進は一段と困難になると判断して公表を避けたのだろう。政府の対応は不信感を高めた。
 そもそも軟弱地盤の改良はできるのか。専門家がマヨネーズ並みとも表現したほどで、施工上の不安材料となっている。完成が見通せない状況では総工費も判然とはせず、国民負担は膨らみ続けかねない。その一方で近年は沖縄振興費の減額で地元に圧力をかけた。これでは不誠実ととられても仕方ない。
 移設に反対する県は法廷闘争を続けているが、判決に至った訴訟はいずれも県敗訴が確定した。軟弱地盤などを根拠にした埋め立て承認の撤回は、国交相が取り消した。県は提訴したが、県は訴訟を起こす資格がないとする判決が確定した。ただ判決は、裁決の妥当性に関する判断には踏み込まなかった。
 安全保障環境は厳しくなっている。岸田政権は安保関連3文書を改定し、安保政策の転換を図る。防衛力強化を打ち出し、防衛費増額をもくろむ。日米の連携強化は一体化を加速させ、前のめりの姿勢で専守防衛の理念は形骸化が進む。
 在日米軍専用施設は沖縄県に集中する。岸田文雄首相は負担軽減を図る考えを強調し、辺野古移設に関して普天間の全面返還へ全力を尽くすと政府の立場を繰り返す。それが移設の強行では、「信頼と共感」を掲げる首相の姿勢に疑念が向く。
 沖縄戦では民間人を巻き込む激しい地上戦が繰り広げられた。安保の最前線として、再び戦場になるのではないかという不安や、基地が集中することへの不満は強い。県民感情を受け止めながら、地道な対話を続ける必要がある。

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