2024年 05月20日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.06.09 08:00

【マイナカード】デジ庁の機能不全を疑う

SHARE

 マイナンバーカードを巡るトラブルの発覚が後を絶たない。特にカードにひも付けした公的給付金の受取口座が本人名義になっていない例が相次いでいる。
 デジタル庁によると、家族や同居人らの名義になっているケースが約13万件判明した。親が子のカードを申請した際、親の口座を登録した例などがあるようだ。
 全く他人の口座が登録されていた例も748件あった。自治体の窓口にある共用端末で手続きした際、前の人の口座情報が残されたままになっていて、誤登録につながったとみられる。
 いずれも制度の仕組みや入力方法が十分周知されていなかった表れだろう。窓口での入力はデジタル機器に不慣れな高齢者らが多く、自治体側の窓口支援も不十分だった恐れがある。
 だが、問題の本質は政府の性急な進め方にある。
 政府は昨年、カードを取得すれば最大2万円分の「マイナポイント」を付与するキャンペーンを導入。期限付きだったことなどもあり、自治体の窓口などに申し込みが殺到した。一時、窓口の閉鎖を余儀なくされる自治体も出た。
 自治体や申請者らの対応力を十分把握せずに見切り発車すれば、手続きの現場は混乱する。トラブルを招きやすい。それが想像できなかったのだろうか。
 カードに健康保険証機能を持たせたマイナ保険証に他人の情報がひも付けられていた例も判明している。ポイントの誤付与や顔写真が別人になっていたケースもあった。
 もともとカードの普及には、個人情報の漏えいや不適切な利用などが懸念されてきた。当然、発行の手続きやサービスの拡大には慎重な対応が求められるが、おろそかになっていたと言わざるを得ない。
 デジタル庁に至っては、担当官庁とは思えない緊張感のなさである。口座問題では、家族名義になっている例を2月に把握していたにもかかわらず、公表せず、庁内でも情報共有を図っていなかった。
 2021年に発足したデジタル庁は組織的な課題がたびたび指摘されてきた。職員は経済産業省や総務省など省庁出身者と民間企業の出身者で構成。「風通しが悪い」との声が出ていた。
 業務はマイナンバー関連だけでなく、政府が進めるデジタル改革全般を担う。庁内では当初「業務が多すぎる」との声もあった。今回の問題を見ても、機能不全を疑われても仕方がない。
 国会では今月2日、保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化するマイナンバー法など改正関連法が可決、成立した。政府はこの先、運転免許証なども一体化させたい考えだ。券面を刷新した新カードの発行も目指す。
 いくら利便性を強調しても、信頼性がなければ、安心して利用できない。政府には事業や組織の点検、見直しが求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月